寿司図鑑 雑記32

すしの歴史 おからを使ったすしの話

2009-02-15

島根県浜田市の名物「おまんずし」。画像はマアジで作ったもの
全国に、おからを使ったすしというのがある。
「おからずし」、「きらずずし」、「卯の花ずし」などそのものずばりの名で呼ばれてもいるが、それ以上に複雑で頭をひねりたくなるような名が散見する。
島根県の「おまんずし」、広島県などの「あずまずし」、山口県の「とうずし(からずし)」、愛媛県の「いずみや」、高知県の「ろくたや」、熊本県の「よしのずし」。
「丸ずし」と呼んでいる地域もあって呼び名だけは多種多様だ。
ただし味も姿も、ほとんどかわりなく全国共通ともいえそうなもの。

ようするに甘辛く炒り煮した、おからを魚やコンニャクなどで巻いたり(挟んだ)、乗せたりしたもの。
米の節約に考え出したにしては、非常に作る地域が多く、またいずれにも共通点がある。

さて豆腐がないとおからは出来ない。
豆腐がこの国に入ってきたのが鎌倉時代もしくは室町時代と言われている。
最初は寺などで作られていたもので、後々までも庶民にとって豆腐は手の届かないものだった。
当然作られる量も少ないだろうから、おからだって遠い存在だったに違いない。

だから米のかわりに、おからが使われるようになり、現在のような酢が出来上がった江戸時代初期ではないのだろうか?
もっと下がって18世紀かも知れない。
大都市、たぶん江戸などで安く手に入るようになった、おからを米のかわりに魚に詰め込み、魚にのせて手軽なすしに仕上げた。

だから広島県、岡山県などで「東ずし」と呼ばれるのだし、「おまんずし」ももともとは江戸で有名になった人妻の名を冠した、おからのすしなのだ。