寿司図鑑 609貫目
寿司図鑑1~856貫目は旧コンテンツからの移行データの為、小さい写真の記事が多くあります。

万作の昆布締め/シイラ

まんさくのこぶじめ/しいら / シイラ
万作の昆布締め/シイラ
握り

昆布締めにしたら色合いが悪くなった。でも味は抜群

 関東におけるシイラの立場は、かなり悪い。
 この日、和歌山県から送られてきた1本3キロ前後のシイラの値段が仲卸でキロ当たり300円。
 これ以上ないという安値である。
 鮮度はまあまあいいほうだろう。
 島根県水産技術センターによるとシイラは個体による身質の優劣が激しいということで、よく選んで買い求める。

 これを『市場寿司 たか』に持っていく。
 ネタの切り付けをしてみるとなんとか握りに使えそうだ。
 この握りが悪くない。

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生の握り

「ああ、意外にうまいね。思ったよりも脂があるのかな、うまいね」
 ボクも同意見なのだが、どうにも平凡すぎる。
 シイラというのは関東では純然たる惣菜魚で刺身にして食べるという習慣がない。
 これは、いなだ(ブリの若魚)からしても個性がなく、旨味が薄いと思われているせいだ。

 納得できないので、持ち帰って、昆布でしめてみる。
 強い塩をして1時間。
 塩を洗い流して、清酒で風味漬け。
 これを昆布で包む。
 翌日、『市場寿司 たか』で握りにする。

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 昆布締めにした色合いは決して美しくない。
 でも、味はグンとよくなっている。
 なによりも身がしまって、昆布のグルタミンと、シイラの身のイノシンが結合しての旨味の相乗効果が如実に現れている。
「これはうまいね。生よりもいい。常連さんに出してあげたいネタになっているよ」
 面白いもので、昆布で締めたら食感までよくなっているのだ。
 寿司飯との相性もいい。
「いい握りだね」
 居合わせた市場人からも賞賛の声があがる。

 これこそ「豊年万作」の味わいである。

寿司ネタ(made of)

シイラ
Common dolphinfish,  Mahi-mahi, Dorado Fr/Coryphène commune,  Sp/Lampuga 中国語/鬼頭刀魚、扁頭刀

シイラ
世界中の暖かい海域にいる大型魚。世界中の熱帯域・亜熱帯域・温帯域でとれ、多くの国で食用となっている。例えばアメリカハワイなどのマヒマヒとしての食べ方が、国内に入ってくるなど新しい食文化も見られる。
古くは暖流の影響の強い地域で水揚げされるも・・・・
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