寿司図鑑 637貫目
寿司図鑑1~856貫目は旧コンテンツからの移行データの為、小さい写真の記事が多くあります。

樽サンマ

そんさんま / サンマ
樽サンマ
握り

価格ランク

並

 やっと大型船のサンマ棒受け漁が始まったようで、値段ががくんと下がった。
「これからはサンマ食べときゃ、問題ないな」
 近所の魚屋オヤジが呟く。
〈サンマが出るとあんまが引っ込む〉
 こんな戯れ言もサンマの栄養価の高さからだろう。
 とにかくサンマって「いいことばかりのてんこ盛り」ってやつだ。

 九月になって東京ではサンマ、サンマと喧しい。
 ボクとしてはこんなとき「安いうまい」のサンマは脇において、「少々高いが、よりうまい」サンマを探す。
 ありましたね。
 普通は五キロ判、三キロ判の四角い発泡に水氷で入っているのだが、こっちはまん丸い樽型の豪華な発泡入り。
 並が1本百円、八十円なら、こちらは二百六十円(卸値)なり。
 三陸は坂本水産からきた樽入りサンマである。
 鮮度も並よりもかなり上に思える。

 これを『市場寿司 たか』で握ってもらう。
 一週間に一度は味見するサンマの握りである。

 ささーと卸して、ネタの切り付けをしながら味見した、たかさんの悲鳴のような一言。
「これサンマじゃない」
「じゃあなに?」
「サンマだけどぜんぜん臭みがない。上品な、なんていうのかなー、困った味だ」
「うまいってこと?」
「うますぎるってことだね」

 握りに仕立てたらもっとすごかった。
 口にいれるとトロっと溶けるような感じ。
 よくよく切り付けたネタを見ると、透明な寒天のような層があって、これが白濁しない前の脂なんだろう。
 舌の上で溶けて、すーーーと消えていく。
 淡麗な旨味を残して。
「サンマってこんな味だっけ」
 物覚えの悪い五十路オヤジだから、きっと去年もこんな事を言っていたのだろうね。

 考えてみると高級料理店が高いサンマを仕入れる。
 そんな店に限って本番は夜だから、どんなにいいものを仕入れても、この透明な寒天のような脂は白濁しているに決まってる。
 朝だから味わえるサンマの味なのかも知れぬ。
「たかさんよ、オレたち幸せだね」

寿司ネタ(made of)

サンマ
Pacific saury

サンマ
サンマ科(広い意味でのサンマの仲間)は世界中に4種。もっと狭めてサンマ属は太平洋に2種だ。サンマ科で食用となるのは太平洋にいるサンマと大西洋にいる1種類。ただしサンマほど大量にとれ、食用として重要な種はいない。
サンマは北太平洋に広く分布。・・・・
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