寿司図鑑 638貫目
寿司図鑑1~856貫目は旧コンテンツからの移行データの為、小さい写真の記事が多くあります。

飛魚/トビウオ

とびうお / トビウオ
飛魚/トビウオ
握り

やっと来たぞ、飛魚
「やっと来たよ、トビウオじゃない」
「トビウオなんてずーっと来てたでしょ」
 和歌山県串本市『出口水産』から来た荷(魚貝類の入った箱)を前にしての八王子の居酒屋店主やっちゃんと、ボクの会話である。
「この前まで来ていたのはツクシトビウオとかホソトビウオなんだよ。そしてコイツがトビウオ」
「へええー。わかりませんね、言ってることが」
「トビウオには種類があるってことさ。冬から春に屋久島から来るやつがハマトビウオ、そして春から夏に来るのがツクシトビウオとホソトビウオだろ。そして夏から秋だとトビウオなの」
「トビウオってそんなに種類があるんだ」

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羽根を広げてトビウオであることを確認する

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抱卵している個体が多い

 関東の市場にくる(たぶん全国的にそうだろうけど)、「とびうお」はツクシトビウオ、ホソトビウオ、ハマトビウオ、トビウオの四種類である。
 すなわち「とびうお」とは何種類かの魚の総称だ。
 でも、仲卸も買う側も、「トビウオは総てトビウオだ」として十把一絡げにして考えている。
 だから初秋になって「トビウオが入荷してきたんだ」という感慨に浸れない。

 さて、和歌山県串本市からやってきたトビウオの多くは抱卵していて、お腹がボクに似て膨らんでいる。
 人間で言えば妊娠九か月といった状態だろう。
 じゃあ、「身の方はうまくないだろう」なんて想像するが、そんなことはまったくなく、なかなか美味である。

 たかさんに一本渡して、三枚に卸していく内にも、
「触った感じだけど、これ意外に脂があるのかもな」
 切り取って食べてみたら、つけた醤油にちゃんと脂の玉が浮かんでいる。
 そして、この生で食べるトビウオがなかなかうまいのだ。

 当然、握りにしても絶品だ。
 味があるのだ身に。
 このうまさは背の青い魚独特のもの。
 トビウオ類を煮干しなどに加工するのは、この微かではあるが独特の風味があるためだろう。
 そしてちょっとまったりしているのだけど、これは明らかに脂だ。
 適度な硬さがあって、すし飯との馴染みもいい。

「たかさん、これ一本150円なんだよ。もっともっと高くてもいいね」
「トビウオはそんなもんっじゃない。しかし今年はトビウオを何度も持ってくるね。なぜなの?」
「あれ、これトビウオだけど」
「トビウオだろ」
「そうだよ」
「先月は昆布締めにしただろ。生も握ったし」
「あれはホソトビウオだよ。そしてこっちはトビウオ」
「トビウオに種類なんてあったんだ」
「もう何回も説明してるだろ。また説明しろって?」
「いいよ、いいよ、全然結構です。トビウオなんてこれだから」
 たかさん意味もなくトビウオのポーズを繰り返す。

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トビウオは「これだから!」とトビウオになる、たかさん

「なんだ、そのこれだからって」

寿司ネタ(made of)

トビウオ
Japanese flyingfish

トビウオ
トビウオという言葉はトビウオ科の魚の総称として使われることが多い。一般人どころか漁業関係者も区別がつかないからだ。ここではトビウオ科の標準和名のトビウオのことである。
日本列島周辺に多い中型のトビウオである。8月くらいからまとまって入荷して・・・・
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