寿司図鑑 雑記22

八王子市元本郷「鮨忠 第三支店」

2008-08-31

鮨忠は八王子市内に8店舗もあり、わかりづらいので、すし屋仲間ではそれぞれ町名で呼ばれている。
「横川町さん」と言えば「第二支店」だし、「元本郷さん」と言えば「第三支店」、「元八王子」さんというのもある。
「支店」とつくとチェーン店のようで紛らわしいが、それぞれ暖簾分けし独立した店舗なのだ。

8月13日は観音寺のアカエビを使った玉子焼き、「ままかり(サッパ)」の握りを『市場寿司 たか』で撮影予定だった。
ところが、たかさんが突然の激しい頭痛に見舞われ、午前中は病院で過ごすこととなった。仕方なく代打になっていただいたのが「元本郷 鮨忠」さんである。

元本郷「鮨忠 第三支店」というのは八王子市内、20号線から秋川街道に曲がってすぐ、萩原橋手前にある。
まあ非常に小体な店であり、うっかりすると見逃しかねない。

午後1時過ぎにお邪魔する。店の前に立つとまた思った以上に小さな店である。
間口一間ほどの入り口、引き戸をあけると、「ああ懐かしい」というか、とても魅力的な空間が広がっている。
入ると5人ほどのカウンターがあり、右に4人がけのテーブルが3つ。
とても宴会ができるような店ではない。
せいぜい2、3人で夕食を楽しむのが限度だろう。

店の最大の魅力はどこにも余分な装飾がないということ、また造りも上品で、なによりも清潔であることだ。
そのカウンターの奥にいつもにこやかな「元本郷」さんが穴子の骨を鉄串に刺している。これを干して、素揚げにするのだという。
「本当は軽く焼いて穴子を煮るときの出汁にするんだけど、たまにゃこんなこともやるのよ。さて今日は何を握るの?」
通称「元本郷」さんは八王子でももっとも高齢な現役寿司職人である。
特徴はおだやかで、どこかとぼけた味のある会話がいい。
二代目、女将さんの三人で店を切り盛りしている。
二代目もこの初代の穏やかさと、また確かな寿司職人としての技を引き継いでいる。

ここで「アカエビのすり身の入った薄焼き玉子」、「ままかり(サッパ)の酢締め」を撮影する。
ついでに新子、茹でえび、かんぴょう巻き、薄焼き玉子なども撮影してきた。
昼の握りなのでやや大振りであったが、この「鮨忠」の味は素晴らしいものだった。
その内、この画像を「元本郷 鮨忠」でまとめるつもりだ。
二代目とは市場で毎日のように立ち話をしている。
ケータイをいつまでたってもまともに使いこなせないボクには「ケータイの先生」でもある。
今回の収穫は、この二代目の握った新子である。
その美しさ、握りの硬さ加減、新子のしめ加減など絶品であった。
また「鮨忠」の玉子焼きは薄焼きなのだが、ここのは味醂の甘味が利いていて味わいが濃いのである。
すなわち薄焼きでも味に存在感がある。
茹でえびもかんぴょうも総て自家製というのも特筆すべきだ。

おつまみが豊富なのもうれしい

さて、ボクも五十路となって、そろそろ夕べには「落ち着いた、また舌をして喜ばしい時間を持ちたい」と思うようになってきた。
そんな願望が満たされるのは、「元本郷 鮨忠」のようなすし屋かも知れぬ。

鮨忠 第三支店  東京都八王子市元本郷町1丁目26-10 042-624-3135