寿司図鑑 雑記17

「ふなずし」と「なれずし」について

2008-08-15
 現在の形の「すし」が出来たのは江戸時代のこと。
 これは米の生産量の増大とももに、江戸などで米が大量に消費されるようになったこと。
 愛知県半田市で酒粕から酢が大量生産できるようになったとこと深く関わってくる。
 それ以前、古代においての「すし」というのは総てが「なれずし」、「生なれずし」と言われる乳酸発酵によって出来たものだ。
 これは本来東南アジア起源のもので中国などを経て、米の伝来とともにこの国にやってきた。

 養老令(8世紀)、延喜式(10世紀)には魚だけでなく貝やホヤ、シカ、イノシシなどを「鮓」、「鮨」として登場してくる。
 これら塩漬けにしたものを炊いたご飯と漬け込み、寝かし乳酸発酵させた「なれずし」。
 現在に残るのは和歌山県でわずかばかり、現在でも盛んに作られてるのは琵琶湖周辺のみとなった。
 なかでも現代にあって一般に小売りまでされているのが「ふなずし」なのだ。
「ふなずし」の作り方。
 材料となるのは琵琶湖産のニゴロブナ、ゲンゴロウブナ。
 2種のなかではニゴロブナのものが美味である。
 また基本的には「ふなずし」の原料はニゴロブナと思ってもいい。
 4月から6月の産卵期にとれたニゴロブナを、まずは水洗い。
 ウロコなどを取り、鰓を取り除く。
 この鰓穴からハリガネなどを差し込んで卵以外のワタをきれいに取り出す。
 この腹に塩を抱かせ、樽などに塩とフナを交互に入れ、落としぶたをして水が上がるのを待つ。
 水が上がったら重しをする。
 これを1か月ほど、夏になると取りだして、水で洗い塩抜きをする。
 塩抜きをしたら陰干しなどをして水切り。
 これを本漬けする。
 水切りしたフナを硬めに炊いたうるち米と一緒に桶に漬け込む。
 これを正月くらいまで漬け込んだら、骨まで軟らかくなり食べられるようになる。

 琵琶湖周辺では各町に「ふなずし」を売る加工所・魚屋などがある。
 それぞれ微妙に味わいが違っていて、酸味の強いもの、弱いもの、やや甘味を感じるものがある。
 また香りも、かなり強烈なものから、ほとんど感じないものまである。
 ただし食べた感じは魚で作り上げたチーズに近く、例えば欧州にあって比較的食べやすいもの、臭くて食べがたいものがあるのに似ている。
 基本的には表面の粥状になったご飯は取り除き食べるものだが、このご飯自体も食べられるものである。
 その昔、京都に置いて、「決して無闇にご飯を洗い流すな」と教わったことがある。
 明らかに、ご飯とともにフナの卵巣、身を食べる習慣もあるということだ。
 ただし、普通は表面のご飯を取り除く。
 頭ともども薄くそぎ切りにしてそのまま食べる、というのが基本。
 ボクの場合は少々生醤油を垂らして食べるのが好きだ。
 また薄くそぎ切りにしたもにに熱湯を注いで、即席のお吸い物にする。
 これも意外に美味である。
 特に二日酔いの朝などに効く。

 この琵琶湖周辺の「ふなずし」も「寿司図鑑」に置いて「なれずし・なまなれずし」という記事カテゴリーとしておいおい掲載していく。

●「鮨」「鮓」の漢字表記、意味合いに関しては別項をもうける。