寿司図鑑 雑記10

真鶴 栄寿司

2005-11-22

 神奈川県真鶴、駅に降り立って長い坂道を下りていく。そのうち、真正面に海が見えてきて、また下ってくるとそれが真鶴の深い湾であることがわかるはずだ。そんな下りきった左手にあるのが『栄寿司』である。今や真鶴は観光地として寿司屋、料理屋、旅館などが数知れずあるものの、戦後、そして高度成長期にあっても鄙びた港村でしかなかった。そんな漁村に昭和39年、浅草から移り来た『栄寿司』は当地での江戸前寿司では嚆矢と言える店である。「いったいどうして真鶴に来たのですか」というと、どうもとことん地の魚に惚れ込んだ挙げ句であったようで、今でも養殖はもちろん、旅の魚(築地などを回ってきた魚)は使わず、毎日目の前の漁協に通ってこまめな仕入れを欠かさない。その地の魚の水揚げを見るとともに、ご主人に魚の話を聞きながら仕入れについてまわってみた。当日はめったにない不漁であった。それでも発砲には多種多様な魚が入っている。その多くは東京などの寿司屋ではお目にかかれぬものばかり。期待を膨らませてカウンターに座る。

●真鶴栄寿司