「市場寿司 たか」で試行錯誤した新しい寿司ネタ、定番の魚貝類から各地の郷土料理や我が家の寿司まで種別に公開しています。現在めざすところは1000種のネタ図鑑にすることとし、市場と日本の水産物の可能性を試す。また地方での寿司というものを取り上げて我が国の「寿司」「鮨」「すし」のことを理解していきたいと思っている。
寿司図鑑 本巻
寿司図鑑 雑記
| 本巻767貫 | 稚児鱈/チゴダラ |
2009年5月13日 |
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沼津の仲買、菊貞・山丁 菊池利雄さんから、
「底引きが終わりました。最終競りの魚を送りました。楽しんでください。これからは夏の魚になりますから、面白いものがあったら必ずまた送ります」
こんなメールが届いた。
五月中旬になると、毎年恒例になっている、底曳網終了の連絡である。
ほどなく沼津から、大きな荷物が届いた。
底曳網のカサゴ(ユメカサゴ)、ゲホウ(トウジン)、ムツ、ゴソ(ハシキンメ)、ノドクロ(チゴダラ)、ソコアマダイモドキ、ソコホウボウ。
ウチワエビも入っていて、こちらは刺し網で揚がったものだろう。
それこそ豪華絢爛な駿河湾海の幸だ。
このなかでいまだ寿司図鑑で取りあげていなかったのが、ノドクロ(チゴダラ)だ。
駿河湾のノドクロを三陸の方に見せると「なーんだドンコじゃないか」と言うだろう。
確かにどこからみても三陸のドンコ(エゾイソアイナメ)そっくりだ。
二種の違いは外見からはまったく判断しかねる。
エゾイソアイナメは銚子以北の浅い岩礁地帯に生息する。
チゴダラは深海底引きであがるくらいだから、東京湾以南の深い海底にいる。
生息域は違うけど、個人的には同じ魚なんじゃないか? と疑っている。
三陸でドンコが愛されているのは、その肝のうまさ故だ。
そして駿河湾ノドクロだって、肝のうまさでは負けてはいない。絶品なのだ。
三尾入っていた二尾に、その肝心の肝がほとんどなかった。
それこそ親指の爪くらいの大きさだったのだ。
当たりは一尾のみ。腹に大きな肝を抱えている。
この当たりの一尾を三枚に卸して、身をとんとんとたたく、ここにゆでた肝、ネギ、少量のみそを合わせて、またまたとんとんと叩くのだ。
どうして、とんとんたたいてしまうかというと、チゴダラは水分の多い魚で、身はほろほろとくずれやすい。
だから最初から、たたき、肝やみそ、薬味と合わせた方がいいと思ったのだ。
ようするに千葉県の「なめろう」、三陸の「みそたたき」となる。
確か、三陸ではドンコのみそたたきをよく作る。
これを『市場寿司 たか』に持ち込んだのだ。
見た途端、たかさんが嫌な顔をする。
「食べてみてくれる。まずはさ、ちょっと醤油たらして」
「うまいよ。うまいけど、すしにしてもだめだろうね。みそはすし飯と合わないよ。それでも握る」
このたたきを上にのせた握りがボクにはうまかった。
「悪くないじゃない。たたきはうまいし、ショウガのせると合うよね」
「でもそのまま食べた方がよくない」
残念なことに、その通りだ。
チゴダラの身は淡白で旨味に欠ける。肝のうまさが、それをおぎなってあまりある。
甘みは一切加えてないのに、肝の旨味が甘いように思えてくる。
確かに、これだけ食べる分にはとてもうまい。すし飯にあえて「のせなくてもいい」のかな?
逆にいうと「のせてもいい」んじゃないだろうか、うまいよ。
2009年5月11日
●市場魚貝類図鑑、チゴダラへ
http://www.zukan-bouz.com/taraasiro/tigodara/tigodara.html