寿司図鑑1~856貫目は旧コンテンツからの移行データの為、小さい写真の記事が多くあります。
ばら烏賊の煮イカ
ばらいかのにいか / スルメイカ
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今年は「ばらイカ」こないな、と思っていたら、たった一箱だけ、八王子総合卸売センター『高野水産』に来ていた。
「ばらイカ」というのはまったくの市場・水産用語で、小さい、生まれてほどないスルメイカであって、箱に並べることもなく、とにかく無造作に放り込んだ、というもの。
塩干業界では「花イカ」というのだけど、本当は漢字で「端イカ」と書くのが正しい。
要するに親が出てくる前(端)にとれるイカという意味合いだ。
関東では「麦イカ」という。これは麦の収穫期である5月から七月にとれるためだ。
日本列島周辺には3群のスルメイカ集団がおり、「ばらイカ」は例年だと、新年早々から顔を出す。
しかも築地で小山をなすほど大量に来るのだけど、今年はここまでパラリパラリとしか入荷してこない。
この辺りが自然に左右される、魚貝類の世界の面白さだろう。
久しぶりに「ばらイカ」を見つけて喜んだのが八王子横川町の『鮨忠』さん。
最近ではあまり作られない、煮いかを得意とする店でる。
これを見て、『市場寿司 たか』の渡辺隆之さんは、煮いかをどうやって作るのだろう。
まだその仕込みを見ていないな、なんて思い至る。
そこでキロ当たり500円という格安のを1キロ買い求める。
たかさんにお願いすると、ちょうど暇だったようで、「あいよー」とすぐに卸し始める。
まずはワタと足を引き抜き、ワタを外す。
ワタについた墨袋をとり、胴のなかにワタとげそを戻している。
「たかさん、こんなことをしたらイカが汚れない」
「いいんだ。ワタと煮ると柔らかいんだよ」
これは昔、兄弟子に教わったやり方なのだという。
これで水と醤油、砂糖と酒を煮立たせて、三尾分づつ煮上げていく。
仕込み時間は20分とかからない。
イカは煮汁に少々漬け置く。
これを切り付けて、握るだけだ。
ほどなく煮いかの握りがやってきた。
そう言えば、今年最初の煮いかの握りだ。
ワタと煮ると柔らかい、というのは本当らしい。
ほどよく噛み切れるし、皮に風味がある。
「ばらイカ」はやや旨味に欠けるところがあるのだけど、今回はこれをツメで補った。
なんとも初夏らしい、小イカの握りだ。
相模湾から「麦イカ」が到来するのも、すぐだろう。
きっと麦の穂も頭を垂れているに違いない。
2009年5月14日
寿司ネタ(made of)
スルメイカ
Japanese flying squid
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