寿司図鑑 768貫目
寿司図鑑1~856貫目は旧コンテンツからの移行データの為、小さい写真の記事が多くあります。

ばら烏賊の煮イカ

ばらいかのにいか / スルメイカ
ばら烏賊の煮イカ
握り

今年は「ばらイカ」こないな、と思っていたら、たった一箱だけ、八王子総合卸売センター『高野水産』に来ていた。
 「ばらイカ」というのはまったくの市場・水産用語で、小さい、生まれてほどないスルメイカであって、箱に並べることもなく、とにかく無造作に放り込んだ、というもの。
 塩干業界では「花イカ」というのだけど、本当は漢字で「端イカ」と書くのが正しい。
 要するに親が出てくる前(端)にとれるイカという意味合いだ。
 関東では「麦イカ」という。これは麦の収穫期である5月から七月にとれるためだ。

 日本列島周辺には3群のスルメイカ集団がおり、「ばらイカ」は例年だと、新年早々から顔を出す。
 しかも築地で小山をなすほど大量に来るのだけど、今年はここまでパラリパラリとしか入荷してこない。
 この辺りが自然に左右される、魚貝類の世界の面白さだろう。

 久しぶりに「ばらイカ」を見つけて喜んだのが八王子横川町の『鮨忠』さん。
 最近ではあまり作られない、煮いかを得意とする店でる。

 これを見て、『市場寿司 たか』の渡辺隆之さんは、煮いかをどうやって作るのだろう。
 まだその仕込みを見ていないな、なんて思い至る。
 そこでキロ当たり500円という格安のを1キロ買い求める。
 たかさんにお願いすると、ちょうど暇だったようで、「あいよー」とすぐに卸し始める。

 まずはワタと足を引き抜き、ワタを外す。
 ワタについた墨袋をとり、胴のなかにワタとげそを戻している。
「たかさん、こんなことをしたらイカが汚れない」
「いいんだ。ワタと煮ると柔らかいんだよ」
 これは昔、兄弟子に教わったやり方なのだという。

 これで水と醤油、砂糖と酒を煮立たせて、三尾分づつ煮上げていく。
 仕込み時間は20分とかからない。
 イカは煮汁に少々漬け置く。

 これを切り付けて、握るだけだ。
 ほどなく煮いかの握りがやってきた。
 そう言えば、今年最初の煮いかの握りだ。

 ワタと煮ると柔らかい、というのは本当らしい。
 ほどよく噛み切れるし、皮に風味がある。
 「ばらイカ」はやや旨味に欠けるところがあるのだけど、今回はこれをツメで補った。
 なんとも初夏らしい、小イカの握りだ。
 相模湾から「麦イカ」が到来するのも、すぐだろう。
 きっと麦の穂も頭を垂れているに違いない。
 
2009年5月14日

寿司ネタ(made of)

スルメイカ
Japanese flying squid

スルメイカ
日本列島を取り巻くように群れを作って回遊している。乾物として、干ものとして、生鮮品として普通。
貝殻は非常に退化的で薄いプラスティックのよう。武井周作はこれを〈骨硝子紙(びいどろがみ)のごとし〉と記している。
その群れに三群あって、産卵期が・・・・
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