「市場寿司 たか」で試行錯誤した新しい寿司ネタ、定番の魚貝類から各地の郷土料理や我が家の寿司まで種別に公開しています。現在めざすところは1000種のネタ図鑑にすることとし、市場と日本の水産物の可能性を試す。また地方での寿司というものを取り上げて我が国の「寿司」「鮨」「すし」のことを理解していきたいと思っている。
寿司図鑑 本巻
寿司図鑑 雑記
| 本巻768貫 | ばら烏賊/スルメイカ |
2009年5月14日 |
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今年は「ばらイカ」こないな、と思っていたら、たった一箱だけ、八王子総合卸売センター『高野水産』に来ていた。
「ばらイカ」というのはまったくの市場・水産用語で、小さい、生まれてほどないスルメイカであって、箱に並べることもなく、とにかく無造作に放り込んだ、というもの。
塩干業界では「花イカ」というのだけど、本当は漢字で「端イカ」と書くのが正しい。
要するに親が出てくる前(端)にとれるイカという意味合いだ。
関東では「麦イカ」という。これは麦の収穫期である5月から七月にとれるためだ。
日本列島周辺には3群のスルメイカ集団がおり、「ばらイカ」は例年だと、新年早々から顔を出す。
しかも築地で小山をなすほど大量に来るのだけど、今年はここまでパラリパラリとしか入荷してこない。
この辺りが自然に左右される、魚貝類の世界の面白さだろう。
久しぶりに「ばらイカ」を見つけて喜んだのが八王子横川町の『鮨忠』さん。
最近ではあまり作られない、煮いかを得意とする店でる。
これを見て、『市場寿司 たか』の渡辺隆之さんは、煮いかをどうやって作るのだろう。
まだその仕込みを見ていないな、なんて思い至る。
そこでキロ当たり500円という格安のを1キロ買い求める。
たかさんにお願いすると、ちょうど暇だったようで、「あいよー」とすぐに卸し始める。
まずはワタと足を引き抜き、ワタを外す。
ワタについた墨袋をとり、胴のなかにワタとげそを戻している。
「たかさん、こんなことをしたらイカが汚れない」
「いいんだ。ワタと煮ると柔らかいんだよ」
これは昔、兄弟子に教わったやり方なのだという。
これで水と醤油、砂糖と酒を煮立たせて、三尾分づつ煮上げていく。
仕込み時間は20分とかからない。
イカは煮汁に少々漬け置く。
これを切り付けて、握るだけだ。
ほどなく煮いかの握りがやってきた。
そう言えば、今年最初の煮いかの握りだ。
ワタと煮ると柔らかい、というのは本当らしい。
ほどよく噛み切れるし、皮に風味がある。
「ばらイカ」はやや旨味に欠けるところがあるのだけど、今回はこれをツメで補った。
なんとも初夏らしい、小イカの握りだ。
相模湾から「麦イカ」が到来するのも、すぐだろう。
きっと麦の穂も頭を垂れているに違いない。
2009年5月14日
●市場魚貝類図鑑、スルメイカへ
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