寿司図鑑1~856貫目は旧コンテンツからの移行データの為、小さい写真の記事が多くあります。
黒星饅頭鯛/クロホシマンジュウダイ
くろほしまんじゅうだい / クロホシマンジュウダイ


土佐の高知は徳島県の山奥からでも高速に乗り、あっという間に到着する。
そこは徳島以上に南国であり、空の青が濃い。
市内を流れるいくつかの河川は浦戸湾という汽水の広い水面を作り、土佐湾へと流れ込む。
この土佐湾、太平洋に向かって眩しそうな目をして立っているのが坂本龍馬であることは有名だ。
さて、その浦戸湾でカニ漁師をしているのが永野昌枝さん、廣さん。
浦戸湾唯一の女カニ漁師、永野昌枝さん(写真上)
夫婦はときどき刺し網にかかった珍しい魚を送ってくれる。
そのどれもこれもがとても手に入れがたい珍魚ばかり。
こんどはどんな魚が来るんだろうと、ワクワクする。
8月28日にやってきた魚は、これまた珍魚の誉れ高いクロホシマンジュウダイである。
本来は熱帯にいる魚で温暖化のせいか、徐々に北に生息域を広げている。
それでも高知県は今でも北限に近い。
四万十川河口や浦戸湾など汽水域にいて、北の魚とも南の魚とも思えない平凡すぎる外見をしている。
面白いのはあまり群を作らず、刺し網などにもまとまってかかることがない。
そのため流通にのらない典型的なものとなっている。
多摩地区は深夜に大雨が降り、ときに突風と雷がなる。
そのため朝方の路面は濡れている。
気温は24度、湿度が高い。
『市場寿司 たか』の暖簾をくぐる。
「たかさん、涼しくなったから、忙しいんじゃない」
「そんなこともないな。むしむしするしな」
店内にお客は一人っきり。
そーっと静かにクロホシマンジュウダイを渡す。
「すぐやろうか」
「いや先に市場を見てくるよ」
市場は木曜日だというのに閑散としている。
魚屋の店頭にはサンマ、マイワシ、ゴマサバなどがあるがめぼしいものはない。
一回りして、たかさんに「今日も寂しいね」と言うと、ちょうどクロホシマンジュウダイを卸している最中である。
身の色合いは悪くない。
「身がしっかりしているね。イサキに似ているかな。なんの仲間なのこれ」
「ニザダイに近いね」
握りにして、なかなかきれいである。
「たかさん、きれいだよ」
「うん、でもあんまり味はないね。むしろシコっとしてるよね。食感がいい」
確かに旨味が薄い気がする。
春に来たときにたっぷり皮下にあった脂が、今回はほとんどない。
どうやらクロホシマンジュウダイの旬は春らしい。
それでも食感のよさ、少ないけど甘味があり、端正な味わいとなっている。
「珍しい魚なの、これは」
「そうだね。めったに手に入らないと思うよ」
「珍しいけど、味は平凡かな、ある意味、秀才型かな」
「どういう意味でしょう」
「味はそこそこってこと」
やっぱりもっと寒くならないと、クロホシマンジュウダイの真の味わいは楽しめない、そう思われる。
土佐の廣丸
http://www.zukan-bouz.com/zkan/hiromaru/index.html
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