寿司図鑑1~856貫目は旧コンテンツからの移行データの為、小さい写真の記事が多くあります。
だし巻き玉子
だしまきたまご /
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毎日、お客のとぎれた間を見つけては「だし巻き玉子」を焼いている。
このたかさんの後ろ姿がいいのである。
一日に十枚近く焼いているに違いなく、これがあらかたその日にはなくなる。
言うなれば『市場寿司 たか』の名物のひとつでもある。
この「だし巻き玉子」の作り方は、だしを取るのは当たり前だけど、ここに味醂、酒、砂糖などで味付けする。
これを卵と合わせるわけだ。
説明すると簡単そうだが、この比率が微妙であるようで、合わせてからも味を見ながらいろいろ加減する。
そして出来上がって、しばらく置く。
焼き上がったばかりよりも、この小一時間立った方が味がいい。
これを握ってもらうと、厚めの短冊に切り、袋状に切れ目をいれて、そこにすし飯を詰め込む。
東京のすし屋の多くはだし巻き玉子を焼き、普通の握りのごとく上にのせる形と、このように袋状にしてすし飯を詰め込む形にわかれる。
「たかさん、握り用の玉子焼きとしては、どれがいい(優れている)のかな?」
「そうだな薄焼き(玉子)かな。すし飯を巻き込むように出来るし、香ばしさが好きだね」
「どうして薄焼き玉子にしないんだろう」
「昔はおつまみ用にだし巻き玉子、握り用に薄焼き玉子を作っていたんだけど、一人っきりで手間がないだろ。両方使えるだし巻きだけにしたんだ」
そろそろ店仕舞いという午後二時に、このだし巻き玉子を二三切れ食べながら、握りをつまみ、遅い昼ご飯をとる、というのがいい感じなのだ。
たかさんは、ネタケースの整理、食器を片づけ、ゴミ出しをしている。
この時間となると市場で働いていたむさい男達が、酒持参でいっぱいやりにくる。
彼らは朝方三時には仕事についているわけで、午後二時はすでに夜ということになる。
たかさんが残り物のネタでつまみを出している。
「なに玉子焼きなんか食ってやがんだい」
煮穴子を肴にいっぱいやっているのが、まことにうまそうだ。