寿司図鑑1~856貫目は旧コンテンツからの移行データの為、小さい写真の記事が多くあります。
夜泣貝/コナガニシ
よなきがい / コナガニシ
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広島県、山口県などで熱狂的に好まれている夜泣き貝とは、瀬戸内海でとれるナガニシのことだ。
残念ながら、最近ではとれる量は少なく、需要が供給に追いつかない。
それをおぎなっているのが、日本海に多い、コナガニシである。
広島駅前市場でも、山口市川端市にも、夜泣き貝が並んでいる。
その、すべてが日本海から送られてきたものだ。
ナガニシの刺身はまことにうまい。巻き貝の中でも最上級だろう。
じゃあ、日本海のコナガニシはというと、ほとんどナガニシと変わらないのだという。
ただ名前の通り、日本海産のものは小振りだ。細長い貝でワタに独特の渋みがある。
食べられるところは足(筋肉)だけなので、小さいと手間がかかって仕方がない。
そんな手間をいとわず、せっせと足(筋肉)を取りだして、店頭に並んだら、すぐにお客が走り寄って買い求める。こんな光景が広島市では日常茶飯事となっている。夜泣き貝なかりせば、生きていけない人も多いと見受ける。
さて、山口市川端市場で買い求めた剥き身のコナガニシを、たかさんに手渡す。
なにも言わないでバットに移し替えて、市場を一巡り。
「さっきの貝、軍艦にしてくれないかな」
「ええ、あれって貝なの、エビとか、また変な生き物何じゃないかと思ったよ」
持ち帰ったら塩もみして、滑りは取り去ってある。
瞬時に軍艦になって出てくる。
赤い足が軍艦の上できれいではないか。
作る合間に味見をして、たかさんの顔つきが一変した。
「なんだこれ、サザエなんかより、断然うまい、うまいね」
当たり前だけど、軍艦二かんの美味は名状しがたい。
コリコリした食感がいい。甘みが強いし、旨味も強い。だけじゃなくて、独特の風味というか微かな渋みがあるのだけど、これが余計にこの貝の値打ちを高めて、天井知らずな美味となっている。
なんていう貝なのと聞くので、「夜泣き貝だよ」と、たかさんに教えると、身もだえするように、
「うますぎて、今夜、夜泣きしてしまいそう。ボク」
まあ五十路を超えたオヤジの戯言だけど、それほどにコナガニシはうまいのだ。
2009年5月21日