寿司図鑑 852貫目
寿司図鑑1~856貫目は旧コンテンツからの移行データの為、小さい写真の記事が多くあります。

芭蕉梶木/バショウカジキ

ばしょうかじき / バショウカジキ
芭蕉梶木/バショウカジキ
握り

この大きな背鰭を持つカジキを東京では芭蕉梶木という。
背鰭の形がバショウの葉に似ているためで、
実際、軟条がバショウの葉の葉脈のようで、
とてもリアルである。
ちなみにバショウとはショウガ科の植物で、近縁種にバナナなどがある。
松尾芭蕉の〝芭蕉〟という俳号がここからきているのは有名で
古くから庭に植えられていて人口に膾炙していた植物だ。
九州では秋に取れるので「秋太郎」という。
秋になるとまとまってとれ、味がよくなるためだ。

相模湾にも、バショウカジキが入ってきているようで、
夏から秋にかけてしばしば小田原から入荷をみる。
実は比較的安い魚なので、丸30キロの三分の一を買い求め、
『市場寿司』で握りに仕立ててもらった。

真っ先に買ったので、いちばん上(頭部に近い部分)が手に入った。
砂ずり、マグロでいうところの大トロ部分は、さすがに脂が乗っている。
脂が乗っていないとうまくない塩焼きにしても、驚くほどに味がいい。
皮がしゃわしゃわとして、口の中でつぶすと、
じわりじわりと脂がしみ出してくる。

すし職人のたかさんも
「バショウはうまくないと思っていたけど、
こんなに旨みがあって、脂がのっている時期があるんだね」
マカジキ同様に種にしてよいと、太鼓判を押すのである。

腹側の部分は筋が多いものの非常に美味であった。
脂のせいか、甘みがあり、筋もそれほど硬くなく気にならない。
すし飯に負けない味の強さがあり、へたな本マグロよりも味わい深い。
問題は背の部分。
うまいことはうまいが物足りない。

たかさんとあれこれ思案して、づけにする。
しょうゆにみりん少々合わせ、これに種をくぐらせる。
このまま1~2分ほど待ち握る。
薬味はわさびではなく、練り辛子である。
脂の甘さの代わりにしょうゆのアミノ酸、
みりんの甘みが加わって、やや淡泊すぎるのを補ってくれる。
「これ、いくらでも食べられる味だね」
「そうだね。古くからあったやり方だけど、いいね。
ちょっと物足りない魚なんかには非常にいいよ」

すしを食べた後の汁は、中骨でだしをとった。
これも絶品である。

寿司ネタ(made of)

バショウカジキ
英名/Indo-Pacific sailfish

バショウカジキ
九州、本州などでは夏から秋の魚のひとつである。カジキ類の中では比較的安いもので、全国的に流通することはあまりなく、ローカルな味。
主に刺身用として各地で食べられている。ほとんどが鮮魚で加工用になることは希。刺身だけではなく、ムニエルやフライ・・・・
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