寿司図鑑 615貫目
寿司図鑑1~856貫目は旧コンテンツからの移行データの為、小さい写真の記事が多くあります。

けんけらけん/クロシビカマス

けんけらけん / クロシビカマス
けんけらけん/クロシビカマス
握り

「小さいな。これでも脂があるのかな?」
 荷の前で考え込んでいたら、「すみやきだ」というので居酒屋のオヤジ達がどんどん買い込んでいく。
 箱はすぐに空っぽ。
「失敗したな」と思っていたら翌日も入荷してきた。
 これを数本買い込んで、たかさんに渡す。

 和歌山県串本市の『出口水産』から出荷してきたクロシビカマスだ。

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 普通、煮つけにしたり、塩焼きにしたり。
 まさか生(刺身)で食べようなんて思いもしない。
 なぜなら皮からあらぬ方向に硬い骨が伸びていて、なかなか柵取りがままならない。
 でも我が寿司図鑑においては過去に何度もクロシビカマスにいどみ、やっと刺身に仕立てる方法を編み出したのだ。
 と言っても、皮から中骨までの骨のない層を切り取るという単純極まりないやり方なのだけど。

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 さて、今回のものはキロあたり500円という激安。
 しかも400グラムほどしかないので一本200円前後しかしない。
 問題の問題があるとすると、この小振りであることだ。
 季節は盛夏、猛暑のお盆前、小振りのクロシビカマスはうまいんだろうか?

 やっと切り付けたネタで四,五かん。
 やはり脂は薄い。
 当然甘味も旨味も少ない。
「いけるよ」
 あまり脂が好きではない、たかさんは「これくらいがいいね」なんて言う。
 物足りなさを感じていて、また二かんめを放り込むと、なぜか今度は、やや甘味を感じてきた。
「さっきは腹が空いて、思わず味もみないで食ったけど、じっくり食べるとうまいね」
「うまいだろ。寿司もちゃんと味わって食ってほしいよ」

 結局四かんほども口に放り込んで、ややもの足りないけど、「とてもいい味であること」を確認。
 相模湾小田原では、30センチ未満のクロシビカマスを「けんけらけん」と呼ぶのだそうだ。
 とすると、今回のは明らかに「けんけらけん」である。
「けんけらけんか? ケセラセラに似てるね」
“ケー、セラ、セラ〜”
 いきなり唄うな。

寿司ネタ(made of)

クロシビカマス
Snake-mackerel, Bermuda catfish

クロシビカマス
世界中の暖海域の深場に生息する。
日本各地で水揚げがあるのの好んで食用とする地域はさほど多くない。脂が強く、皮の方から長く硬い骨が身に伸びていて、食べにくいことから、食べる地域と食べない地域がくっきり分かれる。当然、流通にはあまりのらない。・・・・
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