寿司図鑑 717貫目
寿司図鑑1~856貫目は旧コンテンツからの移行データの為、小さい写真の記事が多くあります。

黒目抜/クロメヌケ

くろめぬけ / クロメヌケ
黒目抜/クロメヌケ
握り

平凡で見てくれが悪くて、しかもあまり馴染みのない魚というのがあって、クロメヌケはその最たるものだ。
 まことに醜い魚で、しかも、しかも、あまりとれる魚ではないのだけど、食べてみるととてもうまい。
 このようなことって、例えば汚い中華料理屋とか、地元の人しかいかない飯屋なんかの例に似ている。
 見てくれの悪さの奥に実力が隠れているのだ。
 どうして、このような色合いに生まれついたのか、神は残酷であるが、うまさの割りに見た目が悪い分、乱獲されないでいるのかもしれない。

 さてメバル属の魚は卵胎生。
 秋にまぐわいをし、メスの腹のなかで受精。
 翌年の晩春から初夏までに出産する。
 この点が他の魚たちと大いに違っているのだ。

 今回のクロメヌケは根室産。
 腹がパンパンに膨らんでいて、当然腹の中の卵巣が大きく育っている。
 そのぶん身はやせていて、脂ものっていなかった。
 これが2月に紋別のまるとみ渡辺水産からいただいたものだと脂の甘みが感じられて、その上、身自体がふっくらしてうまかったのなんのって。
 ああ、この違いどこからくるのだろう。

 これをままよ、とたかさんに握ってもらう。
 味は思ったよりもうまかった。
 なによりも身に甘みがある。
 この甘みにはいくつもの種類があり、今回のクロメヌケのものは脂から来るものではない。
 むしろ舌が触れた途端に微かに感じるもので、それを旨味にまで感じさせるには至らなかった。

「たかさん、思ったよりもうまくないな」
「そうかな、白身としては悪くないんじゃない」
「でも、あえてどうしても食べたいというんじゃない。平凡だね」
「まあ、平凡と言えば平凡だな」

 魚は一種類のものを季節ごとに、なんどもなんども食べないと、その真価がわからないものだ。
 握りでがっかりして、塩焼きで食べたら、びっくりするほど旨かった。
 またまた謎が深まるわけで、またまたクロメヌケを見つけるたびに買ってみて、食べて食べて、食べ尽くしてみるしかない。

まるとみ渡辺水産
http://marutomi-kani.com/

寿司ネタ(made of)

クロメヌケ
Gray rockfish

クロメヌケ
東北でもとれるがほとんどが北海道東部、オホーツク海沿岸で水揚げされている。大型のメバル(メバル属)だ。
豊漁不漁の波があるようで、ときにまとまって水揚げされる。関東などにも入荷をみるもので、見た目の悪さから安かったが、近年荷の作りがよくなり・・・・
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