寿司図鑑 1560貫目

ねずし

ねずし / カラフトマス
ねずし
郷土ずし Kyoudozushi

価格ランク

やや高級

 岐阜県下呂市萩原町は旧益田郡である。正月前になると「ねずし」用のマス(カラフトマス)が魚屋さんなどで売られ始める。これに麹、大根、にんじんがあれば、「ねずし」が作れる。主に北陸や東北、北海道で作られている麹を使ったすしが、岐阜県旧益田郡、飛騨地方で作られているのは知らなかった。
古代、中国長江周辺から稲の栽培伝来とともに、炊いたご飯と魚の塩漬けを漬け込んだ、「なれずし」がもたらされた。畿内などでは自然発酵で作れた「なれずし」が北陸、東北、北海道では気温の低さゆえ作れない。ここに麹を加えて発酵を促すようにした、とされている。
ただ、「すし」の語源自体が「酸し」ではなく、「饐える」とか、「和える」、「漬け込む」ことであったりする可能性が高い。麹を使った「すし」は乳酸発酵の「なれずし」の延長線上にはないと思っている。
さて、「ねずし」には今、主にマス(カラフトマス)を使うが、これは明治・大正期に国内漁業に動力船が導入され、北洋でのサケマス漁が行われ始めてからだろう。北洋のサケマスの中ではカラフトマスがいちばん安く、塩マスとして早くから山間部にも送られていた。
『ぎふのすし』(日比野光俊 岐阜新聞社 1993)にサケ、サバ(マサバである可能性が強い)、サンマ(たぶん塩サンマ)、イワナ、煮いか(スルメイカ)なども使ったとあるが、古くは動物質の材料はもっと多様だったはずだ。そこに比較的安くて手頃なカラフトマスが手に入るようになって、昔ながらの魚介類を駆逐したのだと思う。
さて、12月になると「ねずし」の材料を各家庭で買って漬け込みにかかる。
塩マス(カラフトマスの塩蔵品)は三枚に下ろして皮を引き、身はサイコロ状に切っておく。皮や中骨、頭部は取り分ける。大根、にんじんは拍子木もしくは千切りにして塩で殺しておく。
ご飯をたく。炊き上がったら、少し放置して冷ます。生温かくなり手で触れるようになったら、麹と合わせる。この状態で少しならし、水をきった大根とにんじんを合わせる。塩マスも入れて混ぜ、桶などにつけ込む。いちばん上に塩マスの頭、中骨、皮などを乗せて15日前後漬け込む。この間、毎日、表面に上がってきた水分を捨てる。発酵が進むと、ほんのり甘くなり、麹の香りがしてくる。漬け上がったら少しずつ食べつないでいく。
今回の『フレッシュフード まるけん』のものは生臭みがなく、比較的軽い後味のいい味。塩マスの塩気、うま味や大根の風味も感じられてなかなか捨てがたい味わいである。燗酒に合う。
旧益田郡、飛騨地方では大晦日、正月の膳に乗せる。大人はいいとしても、子供にとっていかがな味だったのだろう。今年は、子供にとってどのような食品だったのか聞いて見たい。
[フレッシュフード まるけん 岐阜県下呂市萩原]

寿司ネタ(made of)

カラフトマス
英名/Pink salmon, Humpback salmon

カラフトマス
北太平洋にいるサケ属ではもっとも小型で、もっとも資源量が多い。本種は国内ではオホーツク海、北海道東部太平洋沿岸が漁場なので明治期まで国内ではあまり知られていなかった。
明治になり北海道での漁業が盛んになり、北洋での近代的な漁が始まるとともに・・・・
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