寿司図鑑 1131貫目
トゲクリガニのちらし
とげくりがにのちらし / トゲクリガニ


すし職人のたかさん曰く、
「別に好き好んでカニをつけているわけじゃねー」
これはご近所のベテランすし職人も同様らしい。カニを握りに使うようになったのは最近(1980年代以後)のことだと思っているようだ。江戸前握りは基本的に小魚やエビやタコ、イカなどをちゃんと仕込んでつけるもの、だとしたら、
「カニの握りはつけた気にならない」
これもわからなくはない。
今回のものは青森県産のトゲクリガニの小振りの雌。塩ゆでにすると少ないながら内子が入っていた。これをたかさんと、あれこれ試行錯誤する。
甲羅から内子、みそを取りだし、甲羅をよく洗い水気をしっかり取っておく。脚などの筋肉もていねいに取り、みそ、内子を合わせて軽く混ぜる。
甲羅を軽くあぶり、カニらしい香りがたっているところにすし飯、和えた身をのせて完成である。
「めんどうだけど、小振りのカニはこれかもね」
「全体的に調和しているよね。しかも内子、みそ、カニの身、すし飯が一緒になったのって官能的。悩殺されちゃう」