寿司図鑑1~856貫目は旧コンテンツからの移行データの為、小さい写真の記事が多くあります。
棘蟹擬/イバラガニモドキ
いばらがにもどき / イバラガニモドキ
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タラバガニを説明するとき、蘊蓄めいたことを言いたがる人がいて、「(タラバガニを両手で持って)一見カニのような形をしていますけど、“カニじゃありません”ヤドカリの仲間なんです。それが証拠に足はハサミを合わせて八本しかない」なんてやる。
なにが“カニじゃありません”なんだこの野郎!
我々が一般的に食用とする甲殻類はエビとカニなんて大まかに表現されるものであって、これが分類学の世界で言う甲殻類十脚目という生き物たちだ。
そこにはもっと細かい区分があり、卵を産むとき、いきなり水中に放出するもの(クルマエビなんか)と、いったん自分の身体にまとわりつかせて、孵化するまで保護するもの(多くのエビとヤドカリ、タラバガニ、そしてカニ)に分かれる。
後者の区分にまで降りてくると、ここでもまたいくつかの区分に分けられるのだけど、一般的にエビと言われるものの無防備な身体を敵から守るときに、生き物の選択としてとりあえず、身を泥の中や、貝殻に隠すというのが手っ取り早い。
もぐり込ませるときに、膨大な時間をかけて身体の後半を折り曲げ、歪めてしまったので、かれらを異尾類とよぶ。
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無防備な身体をもぐり込ませたのが海底にある軽石だったカルイシヤドカリ君
ヤドカリも沼津などに揚がるコシオリエビも、アナジャコもタラバガニ科の生き物も総て異尾類である。
ヤドカリが貝殻とか、いろんな身を隠す、守るスーツから抜け出す過程にタラバガニ科があって、そして強靱なバトルスーツに身を固めた状態が短尾類であるカニらしいカニとなる。
ここで申し述べたいのは「短尾類」=「カニ」ではないということ。
タラバガニ類はエビのようなやや無防備な状態から、カニのような甲冑に身をまとう中間的な存在だけど、「カニではない」とは言い切れないのだ。
「カニ」の語源は「“か”=“殻”」と「“に”=“丹”」なのだという。
殻はわかりやすいが“丹”というのは赤いという意味。
ゆでると赤くなるということだ。
また「かにくそ」というのがあって、これは生まれたばかりの子が初めてする「●そ」だという。
真っ黒なもので、サワガニの甲羅に似ていなくもない。
結局「カニ」というのは曖昧な言語というのがおわかりいただけただろうか?
いかん、「カニ」の説明が長くなってしまったが、今回の主役はイバラガニモドキ(このあまりに分類学的な和名やめて欲しい)である。
タラバガニ類で市場などに流通し、一般に食用となるのはタラバガニ、アブラガニ、ハナサキガニ、それに加えてイバラガニモドキの四種類だ。
なかでもイバラガニモドキは少なく、あまり存在感がない。
主に北海道釧路や根室から入荷してくるが、これはどうやらロシア産ではないだろうか?
ちなみに太平洋側ではたぶん土佐湾あたりまでいるのではないかな。
明らかにタラバガニとは異なる容姿であるし、なにやらうまそうな色合いではないので、安い。
安いからまずいとは限らないのが、当たり前だけど魚貝類の世界の常識で、イバラガニモドキは安くてうまい。
今回のはたぶん釧路から出荷されてきたもの。
一キロあたり800円也で、1.6キロと小振り。
でも一尾1500円だしておつりがくるというのがうれしい限りだ。
持ち帰って、まずは身体を解体する。
ふんどしを取り、甲羅を外して、身を二つ折りにする。
これを20分ほど蒸すのだ。
タラバガニ類はゆでるのではなく、蒸すというのが基本。
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タラバガニ類には所謂かにみそがない。だから家庭ではばらしてから蒸し器に入れて蒸す。
この半分を『市場寿司 たか』に持ち込み、握ってもらう。
とにかく四本の足(ハサミも含めて)なので四かん。
先にたかさんに食べてもらい、ボクは撮影。
「すし飯ない方がいいな。もったいないよ」
でたー、カニ食い男らしい発言だ。
二かん目はすし飯から外して、蒸した身だけ食べている。
すし飯は「どうするんだ」。
ボクとしては握りでもうまいと思うのだけどね。
最近ではズワイガニやタラバガニは珍しいネタではない。
普通のネタではないだろうか?
もちろん非常に高い、超一流すし屋では出てこない。
でも軟らかな繊維質の身があり、そこに甘味があり、甲殻類独特の風味がある。
こんな手放しで喜ばしいところに、すし飯があるのがいい。
「ボクは握りの方が断然いいな」
寿司ネタ(made of)
イバラガニモドキ
英名/Golden king clab
国内での水揚げは安定していないが北海道〜三重県まで水揚げをみる。現在ではロシア産が多く、国内ではあまりたくさんとれない。・・・・
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