寿司図鑑 658貫目
寿司図鑑1~856貫目は旧コンテンツからの移行データの為、小さい写真の記事が多くあります。

タカベ

たかべ / タカベ
タカベ
握り

意外に東京を代表する魚のひとつだと思っている。
 色合いから、なんとなく熱帯を思わせるが、東京都は南北にすさまじく長いというのを、この魚くらい実感させてくれるものはない。
 夏になると、毎日のように市場にあるものだが、近所の魚屋なんかの認識は「塩焼き魚の高級品」というもの。
 この地味で目立たない高級魚が九月になった途端、たっぷり入荷してきていて、値段もかなり落ちてきている。
「安いね。茂さん」
 八王子市並木町の『魚茂』が何本か選んでいたので声をかける。
「タカベを焼ける家がなくなってね。最近じゃ売れない魚のひとつだけどね。それなのに、どうしてこんなに高いのってオレなんか聞きたいよなー」
「そのタカベをどうして仕入れてるの」
「これは注文さ。ねえ、どうして高いの、おせーて、おせーて」
 そんなことわかるわけがない。

 そして『市場寿司 たか』に寄ると、なんだかわからないネタがあって、これがやっぱりタカベだったのだ。
「ケンちゃん(仲卸)に来てたんだけど。卸したら、なかなかいいのよ。味があるし、脂もあるしさ」
「どこからきたヤツ」
「神津島とかいったけな」
「それじゃ鮮度悪くない」
「まあ、今日一日が限度かな」
 ちなみに、たかさんの場合、新しすぎて旨味に欠けるものは、一日寝かすことだってある。
 すしネタの場合、「旨味がほどよくないとダメなんだ」という。

 握ってもらったら、そんなにきれいなネタではない。
 普段は刺身にしない魚なのだけど、刺身で食べてみると、思いも寄らぬほどにうまいのは知っている。
 当然、すしにしてまずいはずはない。

 残念ながら鮮度はイマイチだ。
 でも予想以上に旨味を感じる。
 脂の甘味、まったり感よりも旨味が先に来る。
 適度に軟らかいので、すし飯との相性もいい。

 そろそろタカベも産卵期となる。
 産卵期となって秋らしくなるとともにタカベは市場から消えて、また食べたいと思わなくもなる。
 タカベは夏の魚なんだなと思う次第である。

寿司ネタ(made of)

タカベ
Yellowstriped butterfish

タカベ
イスズミ科に入れて、タカベ亜科とする説があるが、タカベ科のままとする。国内の比較的暖かい海域と朝鮮半島周辺にしかいない生息域の狭い魚だ。不思議なことに関東の沿岸域や伊豆諸島に多く、静岡県西部以西ではあまりまとまって揚がらない。
関東周辺、伊・・・・
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