寿司図鑑 730貫目
寿司図鑑1~856貫目は旧コンテンツからの移行データの為、小さい写真の記事が多くあります。

蛤/ハマグリ

はまぐり / ハマグリ
蛤/ハマグリ
握り

市場でなにが難しいかといってハマグリを探すことほど大変なことはない。
 ここでいうハマグリとは標準和名のハマグリのこと。
 例えば築地に「地ハマグリ」というのがある。
 かなりお高いので、正真正銘のハマグリでしょう、なんて思ったら大間違い。
 その昔、江戸前(東京湾奥)でさかんにとれていたのがハマグリ。
 すなわち内湾にいるもの。
 それに「場違(ばち)ハマグリ」というのがあって九十九里や鹿島灘からやってくる外洋性のもの。
 これはハマグリではなくチョウセンハマグリなのだ。
 また韓国中国からくるのがシナハマグリ。
 ときどき国産なんて書かれているが、三重県などで改めて畜養したものだ。
 「その手は桑名の焼きはまぐり」なんて名物にもなっているが、長良川河口堰など木曾三川をいじくりまわして、悪質な開発をしたために伊勢湾は本当の意味でのハマグリの産地ではなくなっている。

 さて、久しぶりに市場でハマグリを見つけた。
 ときどき福井県舞鶴、静岡県浜名湖産などで典型的なハマグリを見るのだけど、実はこれ韓国産。

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 まごうことなきシナハマグリと混ざっている。
 韓国なら産地からしてシナハマグリじゃないか、と思われるだろうけど、朝鮮半島にはハマグリも生息するのだ。
 またシナハマグリ、ハマグリは非常に近縁種であることも忘れてはならない。
 まあ、どっちにしろ今回のハマグリの流通経路は謎である。

 さて、ハマグリの形態的特徴である、前後の長さの違いが感じられるものを選び出して、寿司ネタに仕込む。
 まずは身をむきだし、水管に金ぐしを通して、塩水のなかでよく砂を落とす。
 これを酒、醤油、水を合わせたものでさっと煮るのだ。
 一度煮汁から取りだして、冷めた煮汁に戻す。

 これを『市場寿司 たか』で握りにする。
 やはり、煮ハマグリの握りは最高だ。
 このうま味甘味の強さは貝独特のコハク酸からくるものだろう。
 最低限熱を通したハマグリは軟らかく、すし飯との相性もこの上なくよろしい。
 たかさんも久しぶりの煮ハマグリに顔がほころんでいる。
「ウチでも煮ハマ作りたいね」
「作ればいいじゃない」
「これは手間がかかりすぎだね。一人雇わなくちゃいけない」

 シナハマグリと合わせて、半分を店に提供する。
 持ち帰った煮ハマでいっぱいやる。
 深酒の素とはこのような肴のことをいうのだ。

寿司ネタ(made of)

ハマグリ
Japanese hard clam, Common orient clam, White clam

ハマグリ
国内の内湾でとれる二枚貝の代表的なもの。ひな祭りや婚儀に利用されていた。
食用だけではなく「貝合」などの玩具に、また「ぐれる」などの語源いなるなど様々な分野に登場している。
江戸時代江戸の町には深川、上総などから貝売りがやってきていた。中で・・・・
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