やはり大きいほどうまい。その上、白い地はより白く、黒い部分はより黒い方がいいと思っている。
　ただしそんなものが常に手に入るわけがない。ここでは全長30cmほどの脂の少ない北海道ものをつけてみた。
　すし職人のたかさんも、「味がないね」という。これを薄めに切り、炙ってみた。ほんの少しあぶるだけで格段に味わい深くなった。感じられなかった甘味が浮き上がってきて、あぶった香りも好ましい。
　二枚重ねにしてポン酢と大根おろしで口に放り込む。大根おろしのひやりとした感じにフグの甘さが口に広がる。
「たかさん、イケルね」
「かなりイケルね。フグって感じがする」
「仕舞いの方が上品だよね」
　これで五、六かんがあっと言う間に消えてなくなる。
　万人受けする、わかりやすい一かんではなかろうか？