寿司図鑑1~856貫目は旧コンテンツからの移行データの為、小さい写真の記事が多くあります。
鱚の昆布締め/シロギス
きすのこぶじめ / シロギス
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何度も書くのだけれど、八王子の市場のいいところは仲卸の仕入れ先が、分かれていると言う点にある。
仕入れ先というのは中央市場・地方市場なのだけど、それぞれ集めてくるものに特色がある。
中央市場・地方市場の特色というと、土地土地で水揚げされる魚貝類が違っていることもあるが、面白いのは陸送品の流れも若干違いがあるのだ。
さて、ここでは地物のお話。
八王子総合卸売センター『やまぎし』が通うのが川崎北部市場であり、八王子から目と鼻の先とはいいながら、そこは神奈川県だ。
水産物の流通からして東京都は違っている。
だいたい神奈川県は東京湾と相模湾に面していて、内湾、外海の様々な魚があがる。
築地では海を感じられないが、川崎北部だと少ないながらも神奈川の海を感じ取れる。
『やまぎし』で必ずのぞくものは、三崎や横須賀などからくる入相(いりあい いろんな雑多な魚が混ざる)である。
ムシガレイにカナド、ゴマサバにヒラソウダガツオ、ウミタナゴ、小カツオなど、相模湾が大好きなボクには懐かしい魚が見つかる。
そしてときどき大層なお宝が隠れていることがある。
月曜日見つけたのが見事なシロギス三本。
釣りをする人なら知っているだろうけど、相模湾を代表するうまし魚のひとつなのだ。
これを買わない手はない。
そして暫し考える。
ただ刺身で食ってもうまいに違いないが曲がない。
このまま『寿司図鑑』にしたいなと言う思いを堪えて、持ち帰る。
すぐに三枚に卸して、皮をひき、振り塩。
小半時も待ち、水分の浮き出ている加減を見て、水洗いする。
これを昆布で包んで一日待つのだ。
たかさんの場合、昆布に包まれた魚を見ると興奮するらしい。
昆布をゆっくり剥がして、飴色になったキスを外の光にかざす。
「いいな、この色が、やっぱり昆布締めっていいな」
まだ食べてないのに興奮してどうするの。
とにかく二かん握ってもらうのだが、その前に味見。
たかさん曰く、「このままでいいんじゃないか?」。
そんなことはない。
シロギスというのは上品な白身なのだが、思ったよりも旨味があるのだ。
たぶん秋はシロギスにとっては旬なのではないか?
ただ説明しなければならないのが、シロギスは寒くなると深みに落ちていく。
夏にはそれこそ2〜3メートルの砂地にいるのが、冬には20メートルから30メートル近辺で寒さを堪えているのだ。
寒いせいか食欲がないらしい。
この時期のシロギスは身体がザラザラしている。
脂がなく旨味も少ない。
3月、4月、5月と暖かくなってくるとこのシロギスの身体に徐々に滑りが出てきて、艶めいてくる。
木の芽時のシロギスほど食べて喜ばしいものはない。
この脂がのり、旨味充分のシロギスが夏に産卵すると、がくんとまずくなる。
そして産卵後荒食いするのだろう。
秋にはまた脂がのってくるのだ。
これがそろそろ「落ち」に入る頃に頂点となる。
でてきた握りを口に放り込む。
プンと昆布の香りが立つ、そして昆布の旨味。
その後に、ちゃんとシロギスの旨味が出てくる、舌の上に浮かんでくる。
ここにすし飯はいらないんじゃないか、と思うほどシロギスの昆布締めはうまいのだけど、そうじゃないらしい。
昆布締めした旨味の強いネタがすし飯と合わさってより強い印象を残す。
「たかさん、仕事(調理)したネタっていいね」
「そうだね。すしは仕事しないとダメかもね」
寿司ネタ(made of)
シロギス
Japanese sillago
東京では江戸時代から打瀬舟などで漁獲していて、江戸前天ぷら種としてなくてはならないもの。都内では古くから需要の高・・・・
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