寿司図鑑 724貫目
寿司図鑑1~856貫目は旧コンテンツからの移行データの為、小さい写真の記事が多くあります。

車海老/クルマエビ

くるまえび / クルマエビ
車海老/クルマエビ
握り

クルマエビは江戸前ずしの代表的なネタである。
 その昔は芝、品川沖などでも豊富にとれたのだろう。
 戦後すぐまでは浦安の打瀬船でほどほどにとれてもいたようだ。
 それが最近では江戸前を東京湾と言い換えても、とれる量はわずかばかり。
 昔で言うところの上総近辺までいかねば姿すら見ることはおぼつかない。
 さてそれではクルマエビが高騰しているのかというと、逆であって、昔よりもはるかに安くなっているのだ。
 これは説明するまでもなく1950年代に養殖技術が確立されたからにほかならない。
 そして今やクルマエビ、クルマエビ科のエビは国産よりも輸入ものの方が圧倒的に多くなっている。

 1月23日の朝、八王子総合卸売センター『高野水産』の水槽には膨大な量のクルマエビが泳いでいる。
 社長に、「いくらなの。産地は」と聞くと、
「大きいのと、小さいのがあるだろ。5800円(キロ単位)と、4800円だよ。産地は九州じゃないの」
 大きいのと、小さいの、水槽をなんど見直しても、その差がわからない。
「社長、大きさわかんねーぞ」
 大声を張り上げると、「どっちっでもいいから持っていきな。4、5本だろ」。
 ということで、わからないまま6本ほど購入する。
 袋の中でエビはピシャ、パシャっと勢いよくはねている。
 『高野水産』から『市場寿司 たか』までは薄暗い市場の中を小走りで1分以内。
 たかさんの差し出すボウルに放り込んだら跳ねるやら飛び出すやら。
 なんのためにこんな面倒なことをしているのかというと、「踊り」が食べたくなったからだ。
 これこそ市場の中のすし屋じゃなければできないことだ。
 クルマエビを渡したのが横の戸口からで、店の前から入るまでに10秒ほどしかかからない。
 トンと頭を落として、殻を剥いているのを見てから、自動ドアを開けて店内にはいると、ネタケースの向こう、クルマエビはすでにまな板の上で包丁目を入れられているところだ。
 勝手にお茶をいれて、待つこと3分ほどか?
 そう言えば昔、「3分クッキング」という番組があった。
 テレビを食い入るように見ながら、これが「3分で出来る料理なのか?」というとまったくそうではなく、なぜ「3分クッキング」なのかと子供心にも思ったものだが、エビの踊りは明らかに3分以内にできあがった。

 さて、出来たてを見ると、クルマエビの身がひくひくと動いている。
 動いてはいるけど踊ってはいない。
 この握りの尾をねじり回すと、くるっと元の状態に回り戻る。
 回るんだから「踊り」なのだと言ったすし屋がいた。
 実際に尾をくっと90度まわしてもぜんぜん元の状態にはもどらない。
 むしろ水槽からだしたクルマエビが飛ぶ跳ねるやらするので「踊り」ではないのか?
 当分、クルマエビを生で握ると「なぜ踊りなのか?」という疑問符が消えそうにない。

「やはく食ってみな」
 たかさんの顔がにやけている。
 ボクも後に続いて、また頬がゆるむ。
「やっぱり、なんど食べてもクルマエビの踊りは絶品である」
 とにかく初っぱなが甘い。
 甘いんだけど、わずかばかり甘いだけで、そこにエビ独特の旨味がきて、これもわずかばかりに旨い。
 このわずかばかりの淡々としたものが、その内口中で大きくなって、そこにすし飯が混ざり込み。
 尾を口から引き抜くと同時にさらっと喉に下っていく。

「たかさん、あと何本か買ってくるよ」
「やめときな、数食ってうまいもんじゃないから」

寿司ネタ(made of)

クルマエビ
Kuruma-prawn, Banmboo shrimp

クルマエビ
クルマエビ類総論
クルマエビの仲間は内湾に多く、南にいくほど種類を増す。
外洋にいるイセエビとともにエビの代名詞的な存在で、古来より高級なものだった。
代表的なものにクルマエビ、タイショウエビ、クマエビなどがある。
そして・・・・
市場魚貝類図鑑で続きを読む⇒

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