寿司図鑑 799貫目
寿司図鑑1~856貫目は旧コンテンツからの移行データの為、小さい写真の記事が多くあります。

甘海老/ホッコクアカエビ

あまえび / ホッコクアカエビ
甘海老/ホッコクアカエビ
握り

このところ、回転寿しを見つけると、とにかく飛び込んで、気になったネタを食べまくる日々だ。
 回る皿、飛び交う注文、相変わらず、甘エビって人気があるのだな、としみじみ感じてしまう。
 都心のオフィス街の回転寿し、2かんで135円だから安い。
 安いけど、そのやせ細った冷凍甘エビがぜんぜんうまくないのだ。
 解凍のやり方が悪いのか苦みを感じる(冷凍甘エビだって、いいものと悪いものがあって、解凍が上手ならうまいのだ)。
「初めて甘エビを食べたときは感激したよな」なんて思いながら、甘エビについて考えるの心なのだ。
 
 甘エビが関東だけでなく全国的に知名度を上げたのは1970年代のことだ。
 ボクの記憶では当時デパートの物産展なるものが盛んになり、また旅ブーム(ディスカバージャパン)というのがあった。
 火付け役となったのは新潟県と北海道ではなかったか?冷蔵技術、輸送力が飛躍的に発達したというのも原因のひとつだ。
 地方的な産物であった甘エビががぜんステージ上に躍り出て、関東などで買い求めると、かなり高価であったのにも関わらず、引っ張りだことなったはず。
 それほどに人気があるものを輸入業者が見逃すわけがない。当時、これまた飛躍的な冷凍技術の発達から、北海(大西洋北部)から似たようなエビ(ホンホッコクアカエビ)を見つけて冷凍輸入を開始。この大西洋のエビと太平洋のエビは同種だと思われていたために、いつの間にか甘エビの大衆化につながったのだ。
 ついでに申すなら、いわゆる甘エビは国内以外、大西洋北部、ロシアでも揚がるわけで、今では、それこそドッサリと市場にあふれかえっている。
 このあたりが新潟県で「屯エビ」、すなわち「とれてとれて、水揚げ量が毎回トン単位だった」名残だろう。
 現在では回転寿しの定番・甘エビを食べたことのない人など、絶対に存在しない、そんな状況となっている。

 いかん、長々と書いてしまったが、まとめると甘エビが都会人や産地以外の西日本でも認知され始めたのが、1970年代と新しいということ。
 人気が出てきて、すぐに品薄となって、海外からも輸入されている、ということ。
 現在我々が食べている甘エビは正確には2種類。太平洋産のホッコクアカエビと大西洋産のホンホッコクアカエビなのだ。
 という三点だけはちゃんと覚えておくべきだ。

 そんなことがあって 久しぶりに、増毛産(北海道西岸)小振りのホッコクアマエビを10尾ほど買い込み、たかさんに手渡しする。
 たかさん、あわただしく剥いて、「2尾よりも3尾にするべな」なんて小山状の見た目の悪い握りが出来上がる。
 これをめざとく食べてしまったのが、誰あろうたかさんであって、「やっぱり生の甘エビはうまいな」なんて感激している。
 ボクも改めて、甘エビを食べてみると、やっぱり甘みがあって、適度な食感も楽しめるし、うまいものだなと思う。
 やっぱり甘エビは生に限る。
 鮮度のいい生を食べると、初めて甘エビを食べたときの感激すら思い起こされる。

「そういえば、たかさん、生の甘エビと冷凍甘エビって、あんまり値段違わないよね。味はこんなに違うのに、どうして生を使わないの」
「まあ、歩留まりの問題もあるし、冷凍で小分けパックならいつでも戻せるだろ。生だと仕入れたら、その日に必ず使わないとダメだからね。ウチのような採算ぎりぎりの店はそんなことが命取りになるのさ」

寿司ネタ(made of)

ホッコクアカエビ
英名/Deepwater prawn,Deepwater shrimp,Pink prawn

ホッコクアカエビ
生息する水深が深く、漁業の対象となったのはそれほど古くはない。主に日本海側でとれるもので、1960年代に新潟県などから「ナンバンエビ」という呼び名で入ってきていた。この当時、デパートの物産展などが行われ、徐々に一般に知られる存在となった。
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