寿司図鑑 620貫目
寿司図鑑1~856貫目は旧コンテンツからの移行データの為、小さい写真の記事が多くあります。

ふなずし/ニゴロブナ

ふなずし/にごろぶな / ニゴロブナ
ふなずし/ニゴロブナ
なれずし Narezushi

日本語の「すし」というのは漢字で意味的に表記すると「酢し」。
 乳酸発酵で「酢し」となったもの、酢で「酢し」となったものなど多様な食品を含んでいる。
 発酵食品である「すし」には「なれずし」、「なまなれずし」、「飯ずし」がある。
 ご飯と塩漬けした肉や野菜を漬け込んで乳酸発酵して「酢し」になったものだ。
 この古代からの「すし」には野菜、獣肉、魚、軟体類、ホヤなどが含まれる。
 漬け込んで早いもので数日、時間のかかるものだと数年を要す。

 それから江戸時代になり酒粕から酢が作られるようになると、「早ずし」というのが現れ、作ってすぐに食べられるものになった。

 今回の「ふなずし」はもっとも原始的な「すし」である「なれずし」にあたる。
 春から初夏にとった琵琶湖特産のニゴロブナを塩漬けにし、盛夏にご飯とともに漬け込んだもの。
 本漬けして最低でも半年は食べるまでにかかるという。
 漬け込んだ時間が、ご飯を粥というよりもクリーム状にに変質している。
 中のフナの身と卵巣もぺったんこにつぶれてしまっている。

 琵琶湖周辺にはこの「ふなずし」を作る加工所、魚屋が無数にある。
 それぞれ味に特徴があるという。
 ボクの大好物のひとつである「ふなずし」、出来うる限りたくさん食べて自分なりに評価を下したいと思っている。

 7月21日は梅雨明け十日といわれる酷暑の日であった。
 その昼日中、高島市今津町を歩いて、酒蔵を見つけて純米酒を一本買い求めた。
「琵琶の長寿」という酒なのだけど、気のいい女将さんだったので「このあたりで、ふなずしを買い求めたいと思うのですが、どこがいいでしょうね」と聞いてみた。
 するといろんな店の名前が出て、「結局好みの問題ですね」なんて立ち話。
「中でも魚岩のはまるでチーズのように感じるんです」
 ひとつの町でひとつずつ買い求めるつもりの「ふなずし」なので今回は今津代表で魚岩のものを選ぶ。

 魚岩の店に来ると、ここにも気のいい女将さんがいて、「どれくらいの大きさのがいいのか、わかりませんね」なんて聞いてみる。
「2500円前後のがいちばん多いんです。最近はあまり大きいフナがとれません」
 そのいちばん多い平均的な「ふなずし」を買い求めてきた。
 余談になるが魚岩の一緒に買い求めた「えび豆」、「いさざの佃煮」などとてもうまかったのだ。

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●クリックすると拡大
「ふなずし」は粥状のご飯に包まれている

「ふなずし」は真空パックに入っている。
 取りだして、表面のご飯を洗い流すと、中のフナはまことに小さい。
 ボクは大学生の頃(30年前)から京都に立ち寄っては「ふなずし」を買い求めていたのだけど、当時2500円も出すとかなり大きいものが買えたはずだ。
 これを薄くそぎ切りにする。
 普通はこのすっぱいのを、そのまま食べるのだけど、ボクは生醤油を数滴たらす。
 これがまことにうまい。
 卵は酒蔵の女将さんの言う如く、クセの強いチーズのようでもある。
 でもチーズ以上に旨味がある。
 卵巣は口の中であっという間に消えて、身だけが残るのだけど、ここからじわりじわりと旨味が染み出してつきない。
 咀嚼しながら「琵琶の長寿」を飲(や)る。
 発酵食品と日本酒というのは、なぜにこれほど出合いのものなのだろう。
 唯一「ふなずし」の欠点というと、酒の肴にして、これだけあれば事足りること。
 他にはなにもいりはしない。
 酒がすすんで仕方がない。

 さて、「なれずし」のたぐいは毎日のように食べても飽きない。
 しかし、おいそれとは滋賀まで「ふなずし」を買い求めにも行はしないのだ。
 今回滋賀から持ち帰って総て食べきって、ますます「ふなずし」恋しの感を強める。
 またフナ以外の琵琶湖周辺の「なれずし」も食べてみたいものだ。
 これに関しては情報求むなのだ。

2008年7月21日のメモから
魚岩 滋賀県高島市今津町今津354-11

寿司ネタ(made of)

ニゴロブナ
Crucian carp

ニゴロブナ
「ふなずし」の材料として琵琶湖では高値になるという。
「ふなずし」など、なれずしの材料はなんでもよいのだが、古来よりもっともよく使われてきたのがフナだ。
中でもゲンゴロウブナとニゴロブナがその最たるもの。
そしてニゴロブナの方が骨が軟らかく・・・・
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