寿司図鑑 709貫目
寿司図鑑1~856貫目は旧コンテンツからの移行データの為、小さい写真の記事が多くあります。

松江市内『大鯛寿司』の十二かん、その五赤平/カンパチ

あかひら / カンパチ
松江市内『大鯛寿司』の十二かん、その五赤平/カンパチ
握り

四かん食べ終わって、『大鯛寿司』の握りは大阪のすし屋の発想に近いのだなとわかってきた。
 かならず「ネタをいろうてしまう」。
 月刊東京人の古い号を読んでいたら、江戸料理の店主が「刺身だけは東京の方が関西よりも優れている」といったようなことを書いている。
●注/現在では刺身の盛り方は吉兆が持ち込んだといわれる三種盛りが東京でも主流になっている。
 東京では単品(一種類の魚貝類)で盛り、関西では三種盛りが主流。
 魚貝類には必ず味として優れた部分と、それにともなうクセとか持ち味がある。
 関西ではそれを個性の違う、魚貝類を合わせることで抑えている。
 調和を取っているのだ、といってもいい。
 東京ではこのクセとか持ち味を、とことん受け入れる、そんな愚直さがある。
 江戸前ずしが東京振りなら、一種類の魚貝類をいかにすなおに味わうか、をめざす。
 例えば、その魚貝類に一種独特のクセや風味があっても、それをむしろ喜ぶ。
 関西風なら、魚貝類のクセは薬味、海苔、白板昆布、ときに山椒の佃煮、青じその葉などでうまく消し去っている。
 『大鯛寿司』の握りは関西の高級なすし屋よりも、より洗練されている気がするし、島根県という地の利点をうまくいかしてもいる。
 でもボク自身も“東京的な味わい方”をすしに求めているために、物足りなさを感じるのだろう。

 五かん目のカンパチにも柚の皮が乗せてある。
 松江近辺では「赤平」とか「赤ば」とか呼ばれている。
 今回のネタが天然なのか、養殖なのかが判然としないが、色合いからして天然と思った。
 この一かんだけは評論のしようがない。
 単に単にうまい。
 すし飯の控えめな味わいに、カンパチに濃厚な旨味・甘みが浮き上がる。
 ネタもすし飯も小振りなので、一瞬の光芒のごとくだが、旨味は殷々と続くではないか。
 帰宅してメモを取るために画像で見直してみると、千鳥に包丁目が入っている。
 この仕事があって、一瞬にして口中ですし飯と融合したのがわかる。

 ここにきてやっと、『大鯛寿司』の持ち味が楽しめるようになってきた。
 「一かん目からもういちどやり直したい」気がしてくる。
 この小振りの握りを、もっとゆったりと、舌で味わいながら食べていくべきなのだ。

大鯛寿司 島根県松江市東奥谷町361-9

寿司ネタ(made of)

カンパチ
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カンパチ
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