寿司図鑑1~856貫目は旧コンテンツからの移行データの為、小さい写真の記事が多くあります。
赤貝/アカガイ
あかがい / アカガイ
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定期的に、もしくは発作的に食べたくなるネタがあって、その代表的なものがアカガイである。
アカガイの旬は寒の頃から晩春まで。
とくに寒い時期のアカガイたるや、あまり通でもないせいか、韓国産だろうが、中国産だろうが、ロシア産だって、なんだってうまい。
「アカガイは閖上に限りますな」それほど通ではない。
アカガイの値段をみてみると、まずいちばん高いのが宮城県産(閖上など)、次いで香川、愛媛、大分県。
京都など関西圏では大分ものがもっとも値がいい。
この高級アカガイ、一キロ当たり3000円も4000円もする。
輸入ものだって、2000円から2500円するわけで、さて我が家で手が届くのは輸入ものとなる。
100グラム換算にして話をすすめよう。
普通、握り1個にアカガイ1個を使うサイズだとして、重さは80グラムから130グラムほど。
平均すると1個100グラムとして、×200円だから、握り1個分は原価200円也(すし飯の原価は面倒なのではぶく)。
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韓国産アカガイ3個で300グラム。キロ当たり2000円なので1個200円となる。
簡単ですね。
数学を早い内に放棄したボクにでもわかる問題ですねーーー。
ただし宮城県閖上産のアカガイがキロ当たり4000円だったら1個原価で400円となるとは限らない。
高級品は荷(箱)から選ぶ場合にいいものをまず選別する。
その順位(いいものを選ぶ権利)を得るために余分な代金を支払っている。
箱を開けたばかりの高級品、例えば最初の買い手はキロ当たり8000円以上出さなくてはいけない場合がある。
そして二位以下は4000円ということも。
その上、高いものは大きい。だから計算上はもっと複雑になる。
ということで高級品の世界は忘れよう。
ここから発生するのは労働賃金(利潤)ということになる。
アカガイを割り、ヒモと身に分けて、開いて水洗い。
下ごしらえはそんなに面倒ではない。
普通、原価の三倍の値段をとるという飲食業でも、すし屋の場合、そこまでとれない。
でもここに問題があって、仕入れたネタにはロスがある。
せっかく仕入れたアカガイ、結局一個も注文がこなかったらどうなるか。
仕入れ値総て損益となる。
1個200円で10個仕入れたアカガイ、消費税を考えないで仕入れ値2000円。
二倍400円の単価で握って5個でれば仕入れ値ギリギリ、前部売れたとしても2000円の利潤しかない。
じゃあ3倍の600円だとして4個売れれば元がとれ、前部売れたら4000円の儲けとなる。
しかし飲食業界の採算ベース3倍の法則で一個600円のアカガイなんて、そんなにでるもんじゃない。
たかさん曰く、アカガイは仕入れれば仕入れるほど、「損なのよ」というのもうなずけるのだ。
こんなことで「すし屋というのはまことに儲からない商売だ」なんて事がいわれるわけだ。
アカガイはすし屋の看板だということが言われる。
例えばマグロもそうだろう。
原価の高いものはおしなべて儲からない。
ここまで考えて、目の前の原価400円の韓国産アカガイの握りを、撮影用だといって食べているのがボクなんだけど、「いつもすまないね」とたかさんに頭を下げながら、そのうまさに感動するのだ。
アカガイのうまさは、渋みをともなった香りなんじゃないだろうか。
まずは香りだ。
そして渋みで抑制されて感じる甘み。
寒の時期になって膨らみのある貝の身の食感の豊かさ。
口中がうま味甘み渋み、鼻に抜ける大量の香りで充ち満ち満ちてくる。
『市場寿司 たか』では常時アカガイを仕入れるなんてことは無理だ。
アカガイだけでなく、客単価を落とすためにいろんな無駄をそぎ落としているのだ。
でも土曜日でなければ予約があればアカガイを用意してもいいという。
一般のすし屋でアカガイを食べるなんて、かなりの勇気がいるのではないだろうか?
こんなときは、たかさんにお願いするに限る。
アカガイの場合、多少高くても明瞭会計ですからね。
寿司ネタ(made of)
アカガイ
Broughton'sribbed ark, Bloody clam
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