寿司図鑑 762貫目
寿司図鑑1~856貫目は旧コンテンツからの移行データの為、小さい写真の記事が多くあります。

青柳/バカガイ

あおやぎ / バカガイ
青柳/バカガイ
握り

すしネタでなにがいちばん好きか、というと間違いなく青柳ではないか。
 我ながら曖昧模糊、いい加減な人間なので、そのときどきで変わる。
 定まらないなかでも、常に上位にあって、しかもときに“激しく食べたい欲求”を覚えるのが青柳だ。

 昔、江戸湾(東京湾)は青柳の宝庫だった。
 「青柳」というのは江戸市中での呼び名であって、千葉県市原市青柳がこの貝の産地であり、集積地であったに由来する。
 「ばか貝」とは主に東京郊外向島、千葉県内房などでの名前で、「バカのようにたくさんとれたため」という説もある。
 さて、現在でも船橋、木更津、富津などでは大量に水揚げされている。
 これが本場江戸前の青柳ということになるのだが、残念なことに形が揃わない。
 大振りの一かん握りにして見栄えのいいのは、最近では北海道産となる。
 北海道産は大振りで縞文様がはっきりしている。
 昔はエゾバカガイと亜種として図鑑などに掲載されていた。
 味も江戸前と比べて劣るとされるが、ボクのような通ぶらない平凡な人間にはその違いがわからない。

 その北海道産青柳が活け(殻付き)で入荷している。
 これを七つ、八つ買い求める。
 今回の目的は、すし職人渡辺隆之さんの青柳の仕込みを見ること。
 青柳は殻を剥いてワタを出し、水に入れて、火をつける。
 手を入れてかき回しながら火を通して、手がつけられなくなったら取り出す。
 これが一般的だという。

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 まずは、たかさんに手渡し。
 貝を剥き、ワタを取り、鍋に放り込んで塩をひとつかみ。

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 火をつけてかき回しながら、熱くなって手を入れていられなくなったら冷水にとる。
 これを開いて握りにする。
 大星(貝柱)の握りとで二かん。
 適度の熱が通った青柳はやや反り返るほどに立ち上がり、ほんのり紅花色に染まっている。
 このゴージャスな姿にまずは感動する。

 口に放り込んだとたんに青柳独特の風味が立ち上がり、そこに苦みがあるのだが、これもこの貝特有のもの。
 そしてズンっと甘みが襲ってくる。
 すし飯との相性も抜群にいい。

「これならいくらでも食べられるね」
 これを見ていたのがお隣、中華料理『さくら』夫婦。
 後はすべて二人の胃袋に消えてしまった。
 これほどまでに青柳の握りはうまい。
 
2009年4月22日

寿司ネタ(made of)

バカガイ
英名/Rediated trough-shell,Surf-clam

バカガイ
北海道から九州までの内湾の砂地に普通。古くは瀬戸内海、東京湾でもたくさんとれたが今や安定した産地とは言えなくなってきている。現在入荷量の多いのは北海道と愛知県だ。
日本各地で様々な呼び名があるが関東では青柳といった方が通りがよい。青柳は千葉・・・・
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