寿司図鑑 782貫目
寿司図鑑1~856貫目は旧コンテンツからの移行データの為、小さい写真の記事が多くあります。

針魚/サヨリ

さより / サヨリ
針魚/サヨリ
握り

サヨリは江戸前ずし伝統のネタではないだろうか?
 たぶん江戸時代から使われていたはず。
 基本的には酢で締める。
 そろそろ梅雨入りという候となり、やや時季はずれだが、見事なサヨリを見つけて、昔ながらの江戸前握りの技を、渡辺隆之さんに見せてもらいたくなった。

 用意したのは、サヨリの握りにつきものの「おぼろ」だ。
 本来はシバエビなどをゆでて、すり鉢などですって作るものだが、最近では白身魚が原料となっている。また手間がかかるので、ほとんどのすし屋が河岸(市場)で仕入れている。

 今回のものも築地『山勇』のもの。
 サヨリは1尾71グラムで、産地は千葉県内房産。
 産卵後だと思うのだが、身がしっかりしており、たかさん曰く、「脂もあるよう」だとのこと。
 三枚に卸したら黒い腹の皮をすき取り立て塩に10分ほど。軽く酢で洗う。

 片身1かんにするのだけど、ひとつは真半分に折り、折った部分をスプーン形にして、そこにおぼろを入れて、握りに。
 方や、クルクルと蕨(わらび)に若芽のように細工する。
 2つとも、江戸前握りの基本的な技なのだけど、最近ではほとんと見られない。
 だいたい出来るひとがいない。

sayori0906.jpg

 出来上がった握りに、思わず見とれてしまう。
「たかさん、見直したよ。やるねー。きれいだ」
「こんなのすし屋にとっては基本だよ、基本。出来ない方がおかしいの」

 サヨリは独特の風味、背の青い魚と白身の中間的な味わいがあって、非常にうまいものだ。
 ここにあえて、おぼろをつけ加える必要ありや、なしや。
 おぼろの甘みが感じられ、ほんの微かに感じるサヨリの臭みは消えてしまう。
 サヨリの風味に浮かんでくるおぼろの甘さ、たまにはこのような握りもうれしいものだな。

「たかさん、ときどきこんなのも作ろうよ」
「だめだよ、ウチは一人でやってるんだから、こんなことやってたら店がつぶれてしまう」
 せっかくこのような技がありながらもったいない。
「たまにはいいでしょ」
「いやいや、おぼろの季節も過ぎてしまったなあー」

寿司ネタ(made of)

サヨリ
Japanese halfbeak

サヨリ
国内の北海道から九州までの内湾にいる小型の魚。海面近くを群れで泳いでいる。若い個体は岸近くにまで寄り、美しく下顎が針のように伸びているところなどから目立つ存在でもある。
上品な味わいから古くより親しまれてきたもので、江戸時代などは贈答用にも・・・・
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