寿司図鑑 1286貫目

カツオの手こねずし

かつおのてこねずし / カツオ
カツオの手こねずし
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三重県の郷土料理に「手こねずし」がある。三重県は伊勢湾に面した北部地域と、志摩地方、東紀州の太平洋に面した南部地域でくっきりと食文化を異にしている。
「手こねずし」は黒潮の申し子のような赤身の魚を使った漁師料理だ。本来はカツオ船などが釣り上げたカツオを下ろし、切り身にして醤油につけ込んで置く。これを炊き上がったご飯に混ぜ込んで食べていたのが始まりである。船上なので手っ取り早く手で混ぜ込んでいたので「手こね」となる。
この料理は志摩市和具が起源だとされている。和具にほど近いところで聞いた話では沖で醤油漬けにしたものを、漁師がめいめいに家庭に持ち帰っていたという。これが漁師さんの家庭で定番的に作られるようになり、また白飯ではなくすし飯になる。カツオの漬け地にも砂糖をたっぷり使うように変わる。
また、和具周辺で作られていたものが周辺地域に、後には太平洋に面した全域で作られるようになる。
赤身であるカツオ、マグロ類、ヒラソウダ、スマ、ハガツオなどの他に、白身を使った「手こねずし」があるのは家庭料理になったためだと思われる。
中でももっとも「手こねずし」に使われる頻度が高いのがカツオである。
これが家庭料理となり、少しだけ上品になる。
カツオは水洗いして三枚下ろしにする。皮を引き小さめの切り身にする。これを砂糖醤油に半日程度漬け込む。酒・みりんを合わせて火を入れてアルコールを飛ばし、醤油と合わせた地に漬け込んでもいいが、家庭料理にしては上品過ぎる味になる。
ご飯を炊き、酢・砂糖・塩の合わせ酢ですし飯にする。
聞取した方ですし酢は魚を漬け込んだ地に酢と砂糖を足して作ると言う人もいた。この方が合理的だが、すし飯が濃い醤油色に染まる。
ここに漬け地を切らないままのカツオの切り身を混ぜ込んでいくと、すし飯は薄らと醤油色になり、カツオの身は少しだけすし飯の熱の影響で表面が白く変わる。
志摩地方の家庭の「手こねずし」はすし飯が決して真っ白ではないのだ。
最後に紅しょうが、錦糸卵、青じそ、などを散らすと出来上がる。
夏の食欲が落ちたときなどに最高といった料理だと思う。
カツオのうま味に、甘めのすし飯で後味がいいので、いくらでも腹に納まる。

寿司ネタ(made of)

カツオ
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カツオ
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