寿司図鑑 606貫目
寿司図鑑1~856貫目は旧コンテンツからの移行データの為、小さい写真の記事が多くあります。

焼き穴子/マアナゴ

やきあなご / マアナゴ
焼き穴子/マアナゴ
握り

穴子は関東では煮る、関西では焼くのが普通。
 大阪でもたく(煮る)寿司屋があるが、少数派ではないだろうか?
 また関東でマアナゴを食べようと思うと寿司屋か天ぷら屋に出かけるしかない。
 それが大阪など関西では「焼き穴子」というのは一般的に流通する加工食品のひとつに思える。
 大阪中央市場の『松井泉』の若き社長に「関東では穴子は煮るんです」というと、
「そうですか、自分ら子供の頃から焼いたん食べつけてますからね。煮るなんて思いもしませんね」
 なんて怪訝そうに話す。

 さて、大阪のうまいもんの一つに数え上げたい『松井泉』の焼き穴子を、江戸前寿司職人、渡辺隆之さんに握らせたらどうなるか?
 たかさんがどのような反応を示すか、ちょっと面白そうなので「やらかしてみましょ」。

 焼き穴子は、持ち帰ったら、もう一度軽くあぶる。
 これが冷えぬ間に『市場寿司 たか』に持ち込んで、さっと差し出す。
「たかさん、これを握ってみてよ」
「なんだこれは」
 一切れ食べてみて、
「このまま食べた方がいいんじゃない」
「うまいでしょ」
「うまいからといって握っていいとは限らないからね」
「そこをなんとか」
 これは無理矢理といった風情になった。

 たかさん、とんとんと長めに切り、くるりと折り曲げて握りに仕立てる。
「たかさん、偉い、きれいだね、見事」
 まず、たかさんが一かん。
「うまいよ。うまいことはうまいけど、これじゃ大阪ずしって感じだな」
 確かに焼き穴子は寿司飯との馴染みが悪いように思える。
 ただしそれ以上に、この焼いた穴子がうまいのである。
 香ばしい香り、アナゴの旨味が強いこと、そして脂から来る甘味。
 そう言えば、松井泉の焼き穴子はタレがやや控えめに塗られていて、別容器にタレが添えられている。
 でも、ここでも考える限り、タレを追加しなくても充分にうまい。

 午前九時を回ろうとしている。
 この時間が『市場寿司 たか』のいちばん暇なとき。
 たかさんの後ろでピピピピとタイマーがなる。
 煮穴子の出来上がりだ。
 さて、本日は東西穴子対決といきますか。

松井泉
http://www.matsuiizumi.co.jp/

寿司ネタ(made of)

マアナゴ
Conger-eel

マアナゴ
北海道〜九州までの内湾に生息する。食用になっているアナゴ科の魚は数種いるが、そのなかでももっとも漁獲量が多く、知名度が高いために「真」をつけて「真穴子」と呼ばれている。
人口の多い都市部のある大きな湾(例えば東京湾、伊勢湾、三河湾、大阪湾、・・・・
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