寿司図鑑 714貫目
寿司図鑑1~856貫目は旧コンテンツからの移行データの為、小さい写真の記事が多くあります。

松江市内『大鯛寿司』の十二かん、その十煮穴子/マアナゴ

にあなご / マアナゴ
松江市内『大鯛寿司』の十二かん、その十煮穴子/マアナゴ
握り

次に大皿に置かれたのが、なんと煮穴子であり、意外の感がした。
 『大鯛寿司』は江戸前ではなく、大阪風江戸前ずしなのだ、と思っていたからだ。
 大阪に江戸前ずしが広まったのは関東大震災後と、戦後の委託加工時代である。
 関東大震災で東京が壊滅的な被害を受け、江戸前すし職人が全国に散らばる。
 戦後、外食が統制され、すしに委託加工する場合のみ営業が許可されたときに、江戸前ずしを基本としたため、大阪でもそれに従わざる終えなかった。
 大阪の面白いところは、すんなり江戸風を受け入れなかったことだ。
 なにかしら「いろうてしまう」。
 魚の単味を求心する東京に対して、料理としての完成度を求めるのが大阪である。
 すなおに東京風の技術を受け入れないところは、マアナゴの料理法にも現れている。
 関東では“煮る”のだけれど、関西・西日本では“焼く”のである。
 大阪では江戸前とうたったのすし屋であっても、焼き穴子が主流ではないだろうか?

 同行していた大国様が「巻き込むように握っていますね」と呟いた。
 そのとおりだ。
 関東でも関西でも優れたすし屋というのは、乗せるのではなく、包む(巻き込む)ように握っている。
 ネタとすし飯が一体となるように造るのである。

 煮穴子はほんのり温かい。
 口に入れるとトロリととろける。
 すし飯の存在はあるかなきかのはかなさでしかない。
 甘み、醤油の加減ともに言うことなし。
 文句なしのうまさだ。
 柔らかいのにマアナゴの持つ風味は生きているし、調味料以上にマアナゴの旨さが光っている。

 すし屋の醍醐味を思い切り味わわせてくれる一品だ。
「穴子だけを食べに来てもいいですね」
 ボクの両脇ヤマトシジミさんも大国様も無言である。

大鯛寿司 島根県松江市東奥谷町361-9

寿司ネタ(made of)

マアナゴ
Conger-eel

マアナゴ
北海道〜九州までの内湾に生息する。食用になっているアナゴ科の魚は数種いるが、そのなかでももっとも漁獲量が多く、知名度が高いために「真」をつけて「真穴子」と呼ばれている。
人口の多い都市部のある大きな湾(例えば東京湾、伊勢湾、三河湾、大阪湾、・・・・
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