寿司図鑑1~856貫目は旧コンテンツからの移行データの為、小さい写真の記事が多くあります。
どんちっちあじ/マアジ
どんちっちあじ / マアジ
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待ちに待った「どんちっちあじ」が入荷してきた。
1尾約120グラム前後、20センチ弱のマアジで、鈍い銀色で触ると柔らかい。
「どんちっちあじ」は島根県浜田市と島根県が協力して作り出したブランド。
島根県西沖のマアジは日本屈指の品質を誇る。
一般には「関あじ」などが有名だが、実はマアジを加工する業者(プロ)の間では「長崎県沖から島根県沖までのマアジ」が日本一だとされているのだ。
日本一うまいマアジのとれる海域でとり、しかもていねいな処理をほどこし、特種な機械で脂ののりまで確かめて出荷する、これが「どんちっちあじ」なのだ。
入荷してきた箱には「どんちっちラベル」が張ってあるけど、「ブランド化した理由」を説明した文字が小さすぎて誰も見ない。
買い出し人たちには、ただの薄汚れて、鮮度の悪いマアジにしか思えないらしい。
誰一人手を出さない。
数尾買い求めて、『市場寿司 たか』に持ち込む。
たかさん、見た目の悪いアジを手渡されて、少々困惑気味だ。
袋の中をよく見ると、ワタと餌で汚れている。
「たかさん、“どんちっち”なんだ。よろしく」
「“どんちっち”ってなんだっけ」
もうなんども教えているのに、ぜんぜん覚えられないらしい。
「島根県浜田西沖で巻き網によってとったアジを、脂肪ののり具合を機械で量って出荷したもの。この脂ののりを量る機械の開発って大変だったんだよ」
「でも見た目は平凡だよね。身が氷で凸凹してるし、見た目最悪。それに柔らかいね。なに、これ、本当に柔らかいよ」
まな板で皮を引きながら、ぶつぶつ。
味見に一切れ口に放り込んで「ほーーー、なんじゃこれは」。
ボクにも一切れ「食べてみなよ」。
口のなかに放り込んだ途端、口の中で溶けていく。それほどに脂がのっている。
「これ、アジじゃないよね。アジとはまったく違ってるよ」
出来上がった握りはなかなかきれいだった。
ネタの表面から数ミリほどに乳白色の脂の層がくっきり見える。
これを口に入れた途端に表面の脂が溶け始める。
すーっとネタの繊維が、ほどけるようにとろけて、すし飯と渾然となる。
甘みは当然、甘みではなく、脂の味であり、ちゃんとマアジの旨味が後から感じられる。
なんともいえずダイナミックな味わい。
こんな小さなアジのどこから、この感動的な旨さが生まれてくるのか?
「やっぱりアジじゃないよね。とてもアジに思えない」
たかさん、また刺身に切ったものを食べてみて、ぶつぶつ独り言をもらしている。
今回の「どんちっちあじ」は仲卸の段階でキロ当たり500円でしかなかった。
なんと1尾が60円から80円ほど。
これは見た目の悪さと、荷の作りの悪さもあるだろうけど、「どんちっち」のブランドとしての意味合いが、思ったほど普及していないというところに原因があるのだろう。
島根県の水産アドバイザーとしては、安くてうますぎるアジの握りを食べながら複雑な思いになる。
島根県浜田市「どんちっち」
http://www.city.hamada.shimane.jp/kurashi/nousui/suisan_don.html
寿司ネタ(made of)
マアジ
Japanese horse-mackerel, Japanese jack mackerel
北海道〜九州までの沿岸域、非常に浅いところから水深100mまでで群れを作る。
アジ科には多数の食・・・・
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