寿司図鑑 627貫目
寿司図鑑1~856貫目は旧コンテンツからの移行データの為、小さい写真の記事が多くあります。

首折れさば

くびおれさば / マサバ
首折れさば
握り

価格ランク

やや高級

 最近よく目にするのが首をへし折って、下氷で出荷されてくるマサバである。
 これは定置網などに入ったマサバを生きている内に首を折り即死させたもの。
 乱暴なやり方だけど、釣り師でもあるボクには、お馴染みのよくやっていた「締め方」だ。
 八月二十日、午前九時に八王子綜合卸売協同組合『マルコウ』で見つけたのは見事な「首折れさば」であった。

 産地は三重県鳥羽。
 触っただけで、まだ死後硬直の状態にあるのがわかる。
 しかも体つきがふっくらとして丸みがあり、表面を手でなぞるとぬめっとしている
「いくらなの」
「一本六百円だよ」
 量りにのせると四百グラムに少し欠ける。
 キロ当たり1500円である。
「小サバ」としては高い。
 余談だが、築地場内では一本八百円、千円というのも見ている。
 野締め(漁の途中で締めないで死んだもの)だと、値段が安すぎて関東に送られるに至らない。
 たぶん「首折れさば」の浜値が漁師さんの満足する額だとしたら、「折らないさば」は捨て値となるに違いない。
 このような取り組みは漁業者の方にもよく、買う側にもありがたいものだ。
 さっそく袋に放り込んで『市場寿司 たか』に持ち込む。
 この間、三十秒ほどしかかからない。
 これが『市場寿司』のよさである。

 たかさんに、「首折れさば」を見せると、途端に及び腰になる。
 この人、原則として締めサバすら、週末店を終えてしか食べない。
 当然、生のマサバを食べる気はないらしい。
 それでも握りにだけはしていただく、そのため今回は食べ役にチョンマゲ男を呼んでくる。
 コヤツ、市場人の端くれ、特にマグロには五月蠅く。
 寿司の味にはもっともっと五月蠅い。

 三枚に卸したのがまな板の上で盛り上がって見える。
 血合いの色合いもきれいだ。
 握りにはあっというまに仕立て上がる。

 これをスダチ、塩で二かん。
 普通にワサビをかまし、しょうゆをつけて二かん。

「うまいね。こんな小さなサバがこんなにうまいのかね」
「スダチ塩と普通のじゃ、どっちがよかった」
「オレは普通にしょうゆがいいな。スダチは焼酎にいれるからな」
 ボクもスダチ塩は面白いけど、味としては普段通りの食べ方に軍配をあげる。

 小さなサバなのに弾力(反発する)に加えて、旨味が強い。
 甘味すらあるのは、これは脂が起源ではないように思える。
 やはりこれも旨味成分の多さからだろう。
 そして微かだけど脂のまったりとした感じが舌に残る。
「首折れさば」は素晴らしい。

「たかさんも食べてみなよ」
「だめだね。週中だからね」
 店を出るとき時計を見ると、ちょうど九時半となっていた。

寿司ネタ(made of)

マサバ
Chub mackerel

マサバ
北半球太平洋に広く分布している。鮮魚としてだけではなく加工品としても重要な産業種だ。国内などでは山間部などでの重要なたんぱく源、ごちそうとなっていた。
古く都市部では大衆魚、下魚などとされ、安くてうまい魚の代名詞だった。鮮魚としても加工品と・・・・
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