寿司図鑑1~856貫目は旧コンテンツからの移行データの為、小さい写真の記事が多くあります。
鯖寿司
さばずし / マサバ
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薬師神啓一さんは「じゃこ天」で有名な愛媛県宇和島市のかまぼこ屋さんである。
当然、作る「じゃこ天」は古くからの製法を守った正当なもの。
かねてから、「じゃこ天」のこと、宇和島の魚のことで、情報をいただいていて、そんな遠距離の付き合いも長いものになっている。
そんな薬師神さんに実際にお会いできたのは今年の2月のことだ。
初対面の薬師神さんは、かまぼこ屋さんというよりも優れた料理人に見えた。
その予感が的中する。
島根県浜田市に講師としてお呼びしたのだが、そのとき見せていただいたお手並みに案の定見とれてしまったのだ。
浜田市の仲買市場で型のいい活けオニオコゼを見つけた。
あんまりうまそうなので、ついつい買ってしまって、なんと島根県水産技術センターでおそるおそる、背鰭を外していたのだ。
「ちょっと代わりましょうか」
薬師神さんがまな板の前に立ってからが早かった。
ほどなく出来上がった姿造りが、なんとも素晴らしいものだったのだ。
これは熟練の板前しか作れない代物である。
たぶん東京広しといえども、こんなに見事なお造りは見つけられないだろう。
さて、夏バテだ、もしくは働き過ぎだ(よく言うと)なんて昨日は終日本を読みふけって、なにもしないで日がな一日暮らしていたのだ。
そこに宅配便がきて、ボクは居眠りをしていたらしく、夕方になって薬師神ごちそう便(勝手に命名して失礼かな?)を見たのだ。
ふたを開けると、もっとも喜ばしいものが入っていた。
それは薬師神名物のひとつ「鯖寿司」、そして「じゃこ天」だ。
ここで不意に神吉拓郎の随筆に、なにもない、無為な一日、鯖寿司が届くというのがあったなーなんて思い出す。
誰しも、不意の「鯖寿司」到来に喜びを感じないではいられないだろう。
うれしいな、うれしいな、を十五回ほど繰り返すくらいうれしい。
しかも、今回のサバが見事というしかない。
これを手に入れたいきさつが荷物に入れてあって、要約すると、「一昨日宇和島の市場に見事な、なんと1尾1.4キロもある釣りサバが揚がった。ただ競りに間に合わなくて、翌日にまわされる。これを市場職員の方から連絡があって薬師神さんが30キロほども手に入れた」とのこと。
この見事なマサバが水揚げされてから、市場職員と薬師神さんのやりとりが目に浮かんでくるようだ。
ああ、宇和島に行きたいなー、今すぐに飛んで行きたい。
棒ずしとなった釣りマサバが声をなくすほどにうまい。
酢でしめているのにシコっとした食感がある。
横から見ると分厚い断面が白濁しているのは、夏のサバなのに脂がのっているためだろう。
そして、サバで包まれた酢飯の塩加減、酢加減、ご飯の炊き加減が見事だ。
大きな鯖寿司3本を一家で食べ始めたら、ほんの数分しか食卓に存在しなかった。
最後の一切れを取られた姫の、悔しそうな顔が非常に印象的だった。
鯖寿司の何が難しいかといって、すし飯、寿司に使う魚、魚の酢締めのやり方、その総てが調和していなければならない、というところだろう。
前にも書いたけど、薬師神さん作る鯖寿司はけっして鄙(宇和島本来)のものではない。
京都とか大阪の洗練されたものに近い、もしくはより洗練されたもの。
この薬師神鯖寿司のルーツもお聞きしたいものだ。
さて改めて薬師神さん、ありがとうございました。
そして何よりも宇和島の魚のうまさに、名状しがたい思いがこみ上げてくる。
宇和島に行きたいなー。
薬師神さん、そのうち宇和島でいっぱいやりましょう!
薬師神かまぼこ店
http://www.yakushijin.jp/
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古く都市部では大衆魚、下魚などとされ、安くてうまい魚の代名詞だった。鮮魚としても加工品と・・・・
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