寿司図鑑 1677貫目

滋賀県日野、鯖なれずし

しがけんひの、さばなれずし /
滋賀県日野、鯖なれずし
なれずし Narezushi

価格ランク

やや高級

もともとは三重県産マサバを使って作られた

「なれずし」自体の歴史はここでは語らないが、今現在、日本列島を見渡してもっとも多彩な「なれずし」が存在するのは琵琶湖周辺地域、すなわち滋賀県である。
滋賀県の「なれずし」の多くは湖魚を使ったものだ。今現在、ニゴロブナなどのフナ類、ウグイやハス、カマツカなど数え上げたらきりがない。
そして湖魚と変わらず愛されているのが、海の魚、サバ(基本的にはマサバ)と、サンマで作る「なれずし」である。

滋賀県の「鯖(さば)のなれずし」は主に余呉、長浜などの湖北や、若狭からの鯖街道の中継地点のひとつ、朽木などで作られているのだとばかり考えていた。
若狭から名田庄を通っての鯖街道の周辺域、京都府にも「鯖のなれずし」がある。
また、若狭から朽木や琵琶湖を通る若狭街道の起点である福井県三方や小浜には麹を使った「鯖すし」がある。
滋賀県や京都市へのマサバの供給地は日本海だ、とばかり思っていたからだ。
2024年に見つけた滋賀県日野町の「鯖のなれずし」は、滋賀県、京都市へのマサバの供給地は日本海だけではなく、太平洋から、ということに気づかせてくれたのである。
日野町で「鯖のなれずし」を作っている人によると昔、三重県からよくサバ(マサバ)を売りに来ていたという。それを使って「鯖のなれずし」が作られた。そして今も産地こそ違うが、「鯖のなれずし」が作り続けられている。
滋賀県の中でも甲賀市とともにもっとも琵琶湖から遠いのが日野町である。
この地域は若狭湾の日本海よりも三重県の伊勢湾・太平洋の方が近い。
塩さば(マサバの塩蔵品)であれば現熊野市・尾鷲市・紀北町などのマサバの産地から運べたのだろう。
三重県で作られている「なれずし」にはマサバ、サンマ、コノシロ、アユが使われている。
また奈良県の山間部ではマサバ、サンマ、アユなどの「なれずし」がある。
材料からしても三重県と滋賀県は共通するところがある。
まだ未確認だが、和歌山県もマサバの供給地だった可能性がある。
和歌山県にも「さばのなれずし」があるのだ。
これも余談になるが、滋賀県へのサンマの供給地も日本海ではなく、太平洋でもある可能性が高そうだ。
とすると、滋賀県の、海の魚の「なれずし」はむしろ南から伝わってきたのかも知れない。

発酵臭が少なく、うま味がとても豊かな「なれずし」である


滋賀県で作られている「なれずし」には「本なれずし」と「生なれずし(早なれずしとも)」がある。
違いは細かい点を挙げればいろいろありそうだが、発酵期間の長短である。
「ふなずし」のようにご飯がペースト状になったものは発酵期間が長い「本なれずし」であり、今回の「鯖なれずし」はご飯粒が残っているなど発酵期間が短い「生なれずし」といってもいいだろう。
マサバを使ったものなので、かなり高価だが、発酵臭・酸味が少なく、とても食べやすい。
発酵の進んだチーズに近い味である。
あまりにもおいしいので、深夜酒の友として手放せなくなったほどだ。

ボクの日常食、「なれずし湯づけ」もうまい


朝ご飯の湯漬けにもしたので、深夜の酒の肴、朝の湯漬けと、連続して食べることにあいなった。
湯漬けは、さらさらとお代わりしたいくらいのおいしさだった。
琵琶湖から遠い日野にこんな名品があるとは、滋賀県の「なれずし」の世界は底知れない。

寿司ネタ(made of)

マサバ
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マサバ
北半球太平洋に広く分布している。鮮魚としてだけではなく加工品としても重要な産業種だ。国内などでは山間部などでの重要なたんぱく源、ごちそうとなっていた。
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