寿司図鑑 841貫目
寿司図鑑1~856貫目は旧コンテンツからの移行データの為、小さい写真の記事が多くあります。

『弥助寿司』のさばなれずし/マサバ

さばなれずし / マサバ
『弥助寿司』のさばなれずし/マサバ
なれずし Narezushi

和歌山県和歌山市は、東京大阪で暮らす徳島県人にとって通り過ぎる街だ。
帰郷するとき難波から和歌山に出てフェリーで、というのが四国に渡る場合のいくつかの選択肢のひとつ。
不思議なことに、数知れず通り過ぎたのに和歌山市で一度も途中下車をしていない。
そしてわざわざ行くきっかけが弥助寿司だった。
1986年、なにがきっかけだったのか忘れてしまったが、この店で伝統的な「さばなれずし」を作っているのを知り、紀伊半島一周の旅の途中に和歌山に立ち寄った。
弥助寿司は市内繁華街にある、なんの変哲もない普通のすし屋に見えた。
店内に入ると、二三人のお客がすしを食べていたが、それはまことにありきたりなもの。

「さばずし、ありますか?」
と聞くと、
「ありますよ」
50歳前後に見えたご主人が応えて、お願いすると、一人前(たぶん1本だろう)が出てきた。
とても食べきれない。
残りはお土産にして、持ち帰ってきた。

あれからなんと25年もたっているのだ。
今回のものはちょうど和歌山を訪れた庄助さんが買ってきたもの。
無理に1本分けていただいた。

包みを開けると、まさしく25年前のものと同じだ。
アセというミョウガやショウガに近いような禾本科植物の葉で巻かれた棒状の物体。
葉を除くと中から「さば棒ずし」が出てくる。
それは酢飯ではなく塩ご飯を使い、サバで棒状にしたものを、植物の葉で巻き、漬け込んだもの。
漬け込むことで乳酸発酵が起こり、ほどよい酸味と旨み、そして独特の臭いが生まれる。
滋賀県の「ふなずし(なれずし)」はご飯がかゆ状になっていて、むしろフナだけを食べるという状体にまで発酵が進んでいる。
それに対して「なまなれ」はご飯はご飯のままの状体にとどまっている。
酢で酸味を加えた現代のすしと「なれずし」のちょうど中間にあるのが「なまなれ」なのである。
ちなみにこれは、ご飯ものとしての「すし」ではなく、「なまなれずし」という食品だと思うべきだ。

さて、四半世紀振りに食べる弥助寿司の「さばなれずし」は改めてうまいな、と思う。
その独特の旨みと柔らかな酸味がいいのである。
あえて言うと、独特の臭みもまたよし。
食べるたびに「なれずし」、「なまなれ」のだんだん衰退していくのが残念でたまらない。
惜しい気がする。
弥助寿司の、末永く「さばなれずし」を作り続けていただけることをお願いしたい。
最後に庄助さんに感謝いたします。


弥助寿司 和歌山県和歌山市本町4丁目31

寿司ネタ(made of)

マサバ
Chub mackerel

マサバ
古くは大衆魚、下魚などとされ、安くてうまい魚の代名詞だった。鮮魚としても加工品としても、魚のなかでももっとも重要なもの。古代には「なれずし」が作られ、江戸時代には塩さばや干しさばが広く流通した。塩さばは、「お歳暮」の起源となった。
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