寿司図鑑 1309貫目

和歌山県有田市、さばなれずし

わかやまけんありたし、さばなれずし /
和歌山県有田市、さばなれずし
なれずし Narezushi

価格ランク

やや高級

有田市の一般家庭で作られた「さばなれずし」

すしの歴史は非常に古く稲作などとともに我が国に来たとされている。その最初のものが「なれずし」である。
塩をしたサバと炊いたご飯を合わせて、乳酸発酵させることで「酢し」、すなわち酸っぱくなったもの。
乳酸発酵がすすむと米はどろどろになり、粒が見えなくなってしまうほどで、ご飯を食べてもいいが、主役は魚である。
「なれずし」は乳酸菌の滅菌作用と、うま味・酸味を作り出すことで生まれる保存食である。
この酸味が古代の人々を魅了したのだろう。
和歌山県と三重県の旧紀州は滋賀県に次いでこの「なれずし」がよくみられる地である。
これは保存食としての「なれずし」を都(飛鳥、平城京)に供給していたためではないかと思っている。

ちなみに和歌山県には、ご飯が粥状になるまで発酵させ魚が主役の「本なれずし」があり、魚とご飯ともに食べる「生なれずし(半なれずし)」」があり、また発酵を伴わず、単に魚とすし飯を馴染ませるための、「早ずし」がある。
先にも述べたように、「なれずし」は基本的にご飯を食べるためのものではなく、魚(マサバ)を食べるためのものだが、和歌山県の「さばなれずし」はご飯も食べるし魚も食べるので「生なれずし」である。
この「さばなれずし」は和歌山市の高瀬有希子が送ってくれた、有田市のものだ。
一般家庭で作ったものだろうというのは、新聞の広告で巻かれていたところから想像しての、こちらの勝手な想像である。
和歌山県有田市のものも、和歌山市のものも、明らかに「生なれずし」である。

サバの切り身に塩をして数日寝かせ、塩抜きをする。
ご飯と合わせて、「あせ」の葉に巻いて桶に詰め、重しをして数日から1週間くらい寝かせる。

保存性を高めるために「あせ」の葉で巻く


和歌山県の「なれずし」などで必ず使われているのが「あせ」と呼ばれているダンチクの葉である。
漢字は「暖竹」だが、竹ではなく、むしろ巨大なススキのようなものである。
この葉には殺菌力があるので、塩漬けにしたサバの切り身とご飯を包むと、腐敗しないで乳酸発酵が始まる。

発酵があまり進んでいないのでご飯粒はそのままだ


乳酸発酵はうま味を増す方向性に偏り、酸味は控えめ。
発酵臭は思ったよりも強い。
意外にも強いうま味があるために、すしなのに酒の肴にもなる。
発酵しない酢で調味した「さばずし」とは遠く離れた味といっていいだろう。
協力/高瀬有希子さん(和歌山県和歌山市)

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